【ワイヤレスジャパン2014】携帯電話販売の現状と今後の方向性――携帯電話販売代理店向けビジネスセッション

2014年5月29日 17時33分更新

ワイヤレスジャパン2014

ワイヤレスジャパン2014

 スマートフォンの顧客獲得競争は年々激化していき、今年の3月にはNMPを利用したユーザーに対して5万円以上もの高額キャッシュバックが行われたと話題になった。一方MVNO業界も昨今活発になってきており、イオンや家電量販店など新たな会社が続々とサービスを開始している。そんな中、携帯電話の販売で大きな役割を果たし続けている代理店はどのようなあり方になっていくのか。5月28日にワイヤレスジャパン2014(5月28日~30日、東京ビックサイト)の初日コンファレンスとして行われた「携帯電話販売代理店向けビジネスセッション」において、NTTドコモとKDDIの担当者2人と、野村総研の上席コンサルタントが登壇。ショップの現状と今後のあり方について語った。

 

・販売チャネルの現状と今後の方向性

NTTドコモ 販売部 代理店担当部長 岡 誠一氏

「ドコモショップのお客様満足度上昇について」

 まずNTTドコモの岡氏より現在のドコモショップの現状について説明が行われた。ドコモは現在6000万以上の契約を持ち、ポータルサイト、インフォメーションセンター、コールセンター等で顧客サービスを行なっているが、近年その中でもドコモショップの影響が大きくなってきていると述べる。通信エリアや速度でキャリアごとの差がなくなってきた現状から、ドコモとしては顧客満足の上昇に力を入れており、その中で高い応対力をもつドコモショップが大きな役割を担ってくるためだと岡氏は説明する。最近発表された新料金サービスでのプラン診断、スマートライフのパートナーとしての取り組み、またウェアラブル機器や携帯アクセサリーを扱うドコモセレクトなど、こうしたドコモの新サービスの提案はドコモショップに支えられているところが大きいと語る。

 そんなドコモを支えるショップの現状の課題だが、芳しい状況にあるとはいえない。スマフォユーザーの増加による必要知識量の増大や、契約の待ち時間増加による回転率の悪さがあり、これらは顧客への応対の悪化だけでなく、スタッフの労働環境の悪化にもつながっている。退職率が高く、募集をしても人材が集まらないのが厳しい現状だ。ドコモは待ち時間や応対時間を短くする試みとして、マイショップサイトからの予約や、タブレットを使った接客によりカウンターの占有率を短くするなど改善に取り組んでおり、こうした新しい試みに合わせた店作りの改善に取り組んでいるという。また人材難に関してもスタッフの業務紹介サイトを立ち上げ、ショップスタッフの採用支援も行なっている。これからますます重要になってくるドコモショップの充実をこれからも図っていくと岡氏は展望を述べた。

 

KDDI コンシューマチャネル戦略部長 若槻 肇氏

「市場環境の変化に対応したauショップの方向性」

 次にKDDIの若槻氏が登壇し、上記のテーマでauショップの取り組みを紹介した。若槻氏は現在の市場環境として、やはりスマートフォンが基本になると語る。スマートフォンは現在新規契約より機種変更の方が販売数は上であり、フューチャーフォンからスマートフォンへの移行需要は減少しつつも、ゆるやかな拡大基調にある。そうした中ではシニア層やこうしたリテラシーに疎い人々を如何に取り込んでいくかが鍵になり、その点MVNOや低価格モデルの注目度は上がるだろうと述べた。

 しかしスマートフォンが中心になった一方、MNPや分割割引など契約形態も複雑化し、SNSなどのサービスも普及したために、それらの説明や応対でショップスタッフへの負担は増えている現状がある。
 こうした中、KDDIは現在3M戦略の進化としてプロダクト、サービス、オペレーションの3つの点で価値提案を始めていると若槻氏は説明する。プロダクトの点では先日発表した夏モデルにおける端末ごとの差別化や新しい利用シーンの提案を、サービスの点では「au WALLET」により電子決済の分野で期待を越える価値提案を、そしてオペレーションの点ではショップの強化によって価値提案をし、他キャリアとの差をつける狙いを述べた。

 ショップの重要度が上がる一方、前述したようにショップの負担は増えている課題がある。この改善策としてスタッフの販売力の向上と業務生産性の向上を若槻氏は挙げる。
 販売力の向上のために、スタッフのセールススキル、知識、店舗対応力、モチベーション4点を上げることが必要だという。そのために資格制度を導入してセールススキルの向上を、研修に代わりeラーニングや動画による効率的な学習環境を、そして身につけたスキルを表彰するコンテストを開催してモチベーションの向上を図る。
 また業務生産性は店舗予約や自動音声応答などの業務のオフロード化の推進によって改善されていっているという。

 ショップとKDDIの二人三脚で、これからも協力して改善に取り組んでいきたいと若槻氏は最後に述べた。

 

・携帯電話販売チャネルの現状と今後の在り方

 
野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 上席コンサルタント 北 俊一氏

 前2者のあとに北氏が登壇し、現在の携帯電話販売業界には不信感があると警鐘を鳴らした。経産省では業界の見直しが始まっているという。現在の状況は大手3キャリアによる寡占状態といってもよく、健全な状態とはいえない。また各社が行なっている速い・繋がりやすいといった不明瞭な広告表示、アプリやフォトフレームなどを抱き合わせ販売するレ点販売、MNPによる高額キャッシュバック等は業界の不信感へとつながっており、このままでは規制強化されかねない状況だと述べる。

 携帯販売市場は近年激動の時代で、特にGmailやSNS等の普及によりキャリアスイッチの障壁が下がったこと、各キャリアの均質化、土管化によりMNPが激増。特にここ数年は高額キャッシュバックにより異常な数になっているという。高額キャッシュバックは長年継続して使い続けているユーザーとの不公平感は深刻で、またショップスタッフの負担が増すばかりであり、規制を考えざるをえない状況だと述べた。

 北氏自身は規制には反対であり、各社が自粛して欲しいのが本音だという。しかしキャッシュバックに対する何らかの対策は必要であり、具体的にはSIMロックの解除の方向で考えていると述べる。SIMロックの解除によりユーザーがMVNOなどに移行しやすくすることで、端末販売奨励金の回収がしにくくなり、結果過度な奨励金を防ぐことが出来るというわけだ。

 またPIO-NETでは通信業界への苦情・相談の件数が年々増えていっており、店頭販売であっても「不意打ち性」のある販売に対してクーリングオフの導入が是非されるほど問題になっているという。「不意打ち性」のある販売とは購買者の心の平静が保たれていない時に販売することだ。光ファイバーやモバイルデータ通信の訪問・電話販売では苦情・相談の多さは異常であり、詐欺まがいの方法で販売している話もあるのでクーリングオフの検討はもっともだが、家電量販店での白物家電との抱き合わせ販売や、タブレット等との抱き合わせ販売等にもクーリングオフの導入が検討されている。こうした事態になるほど、行政の業界への不信感は高まっているという。
 
 以上を踏まえて、北氏は価格競争から価値追求の転換の必要性が迫られている他、ユーザー側もある程度の負担をする世界を築くべきだと主張した。

 現在の実質負担金ゼロやMNPキャッシュバックを縮小し、端末コストをユーザーが負担する一方、現在の高価な機種だけでなく様々な価格帯の端末を揃えるべきである。同じ端末を使用するサイクルは長くなるが、これまでが異常だっただけで、端末の修理・再生市場や中古市場の活性化につながっていくという。また一定の条件でSIMロックを解除するようにし、ユーザーが自らのニーズを踏まえた上で、MVNOも含めて多様なキャリアを選べるようにするべきだと主張する。現在はライトユーザー層や長期契約者が割を食っている状況であり、そういう意味でもドコモの新料金プランには期待が持てるという。

 また不健全な競争は代理店に負担しかかからないとして、その意味でも価値競争への転換が迫られており、「顧客接点力」の高まりによって勝負をすべきと主張する。そうした中ではショップ店員に負担をかけすきないところが勝ち抜いて欲しいと述べた。無理に販売するのでなく、顧客との継続性を保つことにより結果を出している「ハヤブサドットコム」や「テレックス関西」といったショップも存在する。「人財」という経営資源に帰着し、覚悟をもってぶれない経営方針を貫くことで可能になる。ショップ店員というのは現在非常に人気がない職種であり、携帯電話業界の地位を下げている一因でもある。業務環境の改善により、業界の地位向上を狙って行って欲しいと述べて、講演を終えた。

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