【第4回スマートフォン&モバイルEXPO】特別講演――グローバル時代のスマートデバイス戦略/ITとスマートデバイスで変貌するビジネス社会の未来

2014年5月18日 14時52分更新

 5月16日、東京ビックサイトで開催された第4回スマートフォン&モバイルEXPOにおいて、ソフトバンクテレコム取締役専務執行役員の今井康之氏と、慶応義塾大学大学院特別招聘教授の夏野剛氏による特別講演が開かれた。
 今井氏は「グローバル時代のスマートデバイス戦略 ~世界で戦う企業になるために~」、夏野氏は「ITとスマートデバイスで変貌するビジネス社会の未来」というテーマでそれぞれ講演を行った。

「グローバル時代のスマートデバイス戦略 ~世界で戦う企業になるために~」

 今井氏はソフトバンクが取り組んでいる事業を例に、「世界基準のワークスタイル」「世界基準のビジネス」の2つを軸に、企業で如何にデバイスを使用し、成長につなげていくかを解説した。

・世界基準のワークスタイル

 ビジネスにおいてスマートデバイスを如何に有効活用するのか。社員にiPadとiPhoneを配布し、さらに「Google Apps」等のクラウドサービスを導入したソフトバンクの例を今井氏は紹介した。iPadによるビデオ通話やソフトバンクショップの決済の使用シーンや、クラウドを利用した海外の現場とのスムーズなやり取りを挙げ、これらの活用で重要なのはグローバルシーンにおいてもリアルタイムマネジメントしなければならないことだと述べる。

・世界基準のビジネスへ

 スマートデバイスとクラウドの導入により、これまでのB to Cビジネスは変化していくとして3つの事例を挙げる。
 1つ目はO2Oだ。O2OとはOnline to Offlineの略称であり、ネット上の広告から実店舗での購入を促す施策のことである。最大の利点は従来のCMやチラシといった広告よりも効果が可視化できることだ。例としてFacebookの使用例を挙げ、性別・年齢といった条件を絞って広告を配信し、結果としてコストダウンを果たしつつも集客アップを果たした例が紹介された。

 2つ目に挙げたのは決済である。これまでは現金・クレジットカードによるものが主流だったが、徐々にスマートデバイスによる決済が広まってきている。ソフトバンクではPayPalと提携し、オンライン・オフラインの両方で電子決済を進めており、導入コストの高いクレジットカードに代わる決済として中小企業への導入もサポートしている。PayPalの導入によりヤマダ電機ではレジ待ちの列をなくし、ネスカフェ原宿店では「顔パス支払い」を可能にして112%の集客を果たした。海外への送金も手軽にできるのでグローバル決済の敷居も下げられる。

 最後に掲げたのはIoT(Internet of Things)だ。パソコンやデバイスといったものだけでなく、全てのものをインターネットに繋げるという考えである。これが可能になれば従来のビジネスは一変すると今井氏は述べる。これまでは売ってしまったらそこで顧客とのつながりが切れてしまうワンショットビジネスでも、例えばオートバイをインターネットに繋ぎ、走行距離や車両の状態等、企業が売った商品の情報をネットから受け取れるようになれば、メンテナンスの案内等をするなど顧客とのつながりをもてるようになり、継続性のあるビジネスに転換することが可能になる。またIoTデータを分析することにより工場や農業分野での事業のコスト削減や業務効率化などが果たせる。ソフトバンクではGEと提携し、事業を展開し始めている。

 今井氏は、ソフトバンクではO2O、スマフォ決済、IoTによるビジネスの拡大をグローバルパートナーとしてサポートしていくと会場に呼びかけると同時に、最後にチャレンジしないことには世界から置いていかれかねない、と警鐘を鳴らし講演を終えた。

「ITとスマートデバイスで変貌するビジネス社会の未来」

 夏野氏はインターネットが普及したここ20年で世界は大きく変わっていると述べ、中でも次の3つの大きな革命が起こったと紹介した。

・効率の革命

 いわゆるIT革命であり、あらゆる効率が向上した。今や航空券の75%がネットからの購入であり、証券取引の95%はネットからである。日本に鉄砲が伝来してきた時くらいのインパクトであると夏野氏は説明する。

・検索の革命

 今では検索すれば誰でも知ることができるようになり、日本は「にわか専門家大国」であると指摘。個人の情報収集能力が劇的に拡大し、個人と組織の情報収集能力差はなくなってしまった。自分のみが持つ情報というのは少なくなり、そうした中では事業への取り組み方は変化せざるをえない。

・ソーシャル革命

 個人の情報発信能力の拡大が起こった。夏野氏は、人類はこれまで個人のひらめきや発見を共有して文明を発達させてきたという持論を掲げ、ここ20年でこの共有のプロセスは圧倒的に短くなったと指摘し、この15年で人類の進化のスピードが早まっているといっても過言ではないとまで述べた。しかし社会はこの「共有」にアジャストしていっているのだろうか、個人能力をそぐ方向に行ってはいないだろうかと疑問を投げかけた。

 これら3つの革命を我々は認識すべきであり、個人能力の拡大、情報系的知識ネットワークの現実化、多様化社会の3つが革命によってもたらされた。こうした中では社会は変化を強要されざるをえない。3つの革命が起きたこの20年はおそらく歴史上最もテクノロジーが発達した20年であり、如何にこの変化を組織に活かすのか。

 まず夏野氏が指摘したのが組織体制の変化だ。役職をフラット化し、個人能力を最大化させる組織が今求められていると述べる。100人のエリートより1人のオタクが勝つようになってきており、そうした中では平均は意味をなさなくなってくる。それは教育にも当てはまり、何を教えるかということを考えなおさなければならないと主張した。

 リーダーの役割も変わってくる。摩擦からイノベーションが起こるという持論の下、夏野氏は従来の利害調整型を見直さなければならないと強調する。方向性、ビジョンを提示できるリーダーが求められてきている。

 最後に今後の日本の経済についての見通しを述べた。日本は人口が減ってきており、経済の衰退は避けられない状況にある。だからこそ今までと同じ組織構造・やり方では駄目だ、毎年新しいことに挑まなければいけないと夏野氏は厳しく指摘する。幸い日本は多くのポテンシャルをもっており、世界トップレベルンボITインフラ、教育水準・労働意欲の高さ、技術の多さ、比較的余裕のある企業がある。故に日本にはカネ、ヒト、そして技術という経営の「三種の神器」は揃っている。だからこそ弱みである語学能力の低さや議論能力の軽視等を克服し、挑戦していかなければならないと述べて講演を終えた。
 
 今井氏、夏野氏の両者に共通していたのは、新しいことへ挑戦すべきというメッセージである。過去の成功体験や地位に甘んじ、そのままのやり方を続けていては決して先はない、常にチャレンジしていかないと世界から遅れてしまうことを両者は繰り返し説いていたのが印象的な講演であった。

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