【NTT Communications Forum 2014】MVNOシェアトップ、OCNの戦略とは――セミナー「NTTコミュニケーションズのMVNO戦略」

2014年10月21日 11時22分更新

10月9日、10日と2日間にわたってザ・プリンスパークタワー東京にて法人向けイベント「NTT Communications Forum 2014」が開催され、ICTビジネスに関わる多くの講演、セミナー、展示によって賑わいをみせていた。本記事においては10日に行われた、NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部の北村和広氏によるセミナーを取り上げたい。本セミナーではMVNO業界の昨今の状況の他、NTTコミュニケーションズが提供するMVNO「OCN」が紹介され、いかなる取り組みを展開しているのかが語られた。

「NTTコミュニケーションズのMVNO戦略」
ネットワークサービス部 担当部長 北村和広氏

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始めにMVNOの仕組みについて簡単にふれた。MMO、いわゆる携帯キャリアのネットワークにMVNO業者が接続してネットのサービスの提供しており、OCNを始めとして多くはNTTドコモのネットワークを利用しているのが現状だ。「OCN モバイル ONE」のポイントはレイヤー2接続であるため、自前で機器でトラフィックの制御等ができる点が特徴であり、そのためOCNは日次70MB等のサービスを出せているという。

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MVNOの市場については、MMOによるMVNO(ソフトバンクのワイモバイル、KDDIのUQ WiMAXなど)も含まれるが、移動通信帯全体の伸び率に比べて、MVNOの伸び率は大きくなってきている。またMMOによるMVNOを含まない場合、グローバルに見てみると、北米は10%、豪州は14%、ドイツ・オランダでは15%であるのに比べて、日本は2013年時点で4.3%と、伸び率はまだまだあるのが分かる。SIMを刺すタイプであり、かつドコモのMVNOのみが対象になるが、国内の伸び率は今年の3月で114万件だったのが8月には141万件へと20%増加しているという。その中でも法人向けの数字も含めてになるが、NTTコミュニケーションズはシェアナンバーワンとなっていると北村氏は語る。

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MVNOといえば2013年頃まで料金が安くて速度も遅いというのがMVNOの普通の姿であった。しかし2013年にLTEが始まったことで状況は変わる。1G/1000円が1つの基準になり始め、音声通話サービスも日本通信より開始される。今年には2G/1000円の世界に入り、イオンや家電量販店など、店頭での端末とのセット販売も主流になってきているのが現在の動向だ。MMOでも新料金プランでは1Gや2Gのプランを出してくるなど、若干MVNOとシェアが重なる部分が出ていると分析している。
SIMフリー端末においては、最近は3万円台で3G端末ではなくLTE対応機種が買えるようになっているのに加え、総務省がすすめているSIMロックフリーの方針もMVMOを後押ししているという。

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次に「OCN モバイル ONE」の特徴が紹介された。速度150Mbpsの日次・月次のメニューと、速度500kbpsの月/7GBのプランを用意されている他、ポータルメニューで利用状況に合わせ、自由にプランの変更できるようになっている。光回線も取り扱っているのを生かして光モバイル割や050とのセット割なども用意。

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ラインナップも豊富にあり、この1年でSMS対応SIMや、クレジットカードのいらないプリペイドSIM、訪日外国人向けのSIMを出している。またIIJが9月18日に容量を増やしたのを受け、OCNも日次・月次の容量を10月から増やしたという。訪日外国人向けのSIMはについては、ネットに写真にアップロードする使い方が多いという話を聞いて容量を1日/100MBを特別に増やしており、販売チャンネルとしては出国前の現地で買えたり(香港・台湾)、国内の空港・ホテルなど旅行者が集まれる場所を用意していると紹介された。

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MVNOの認知度が上がってきているとはいえ、まだまだ伸ばしていかなければいけない状況だと北村氏は語る。OCNのマツコ・デラックスを起用したCMはインパクトが大きく、他社からもMVNOの認知度が上がったと感謝されているという。

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OCNの開発体制についても述べられた。OCNはユーザーの声、ネット上の意見を吸い上げてサービスに反映させることに積極的に取り組んでおり、SMS対応、プリペイド対応、光回線とのセット割、消費税対策によるスペック上げ&料金値下げ、追加容量繰越、アプリによる利用量表示、ターボ機能などはユーザーの声を反映してサービスに追加したものだという。更に年内にも複数の機能追加を予定だ。

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またNPS(ネットプロモータースコア)というものを今年からスタートさせている。NPSは顧客ロイヤリティ指標であり、プロモータースコアとは利用者が人に推奨したくなる意向を数値化したものだ。活用方法としてはモバイルワンに入ったユーザーにアンケートをし、それをNPSマーケティングクラウド「SetmetrixPro」によって分析。その結果、OCNの推奨度と満足度の相関を見ると、「OCN モバイル ONE」はコストパフォーマンスが大きく評価されていることが分かる一方、通信容量の大きさは注意すべき点ということが判明しており、それを反映させて日次の容量を30MBから50MB、70MBと増やしていったという。

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OCNのビジネス向けモデルについても紹介された。ビジネス向けのコンセプトとしては、信頼性(事業継続性のサポート)、カスタマイズ(カスタマポータルにて各種オプションサービスを提供)、カバレッジ―グローバル(M2M、保守など含め幅広くサポート)の3点を意識していると北村氏は話す。
企業の導入例としては3例が挙げられた。1つ目はクボタ社の「クボタスマートアグリシステム」。農業機械にモバイルを付けて保守を行う他、作業員が作物の状況をクラウドに入力するなど、モバイルを介して情報収集し、農作業の見える化を実現。また収集した情報を活用することで根拠に基づく農業経営を支援するものだ。
2例目はレシップ社の「バスロケーションシステム」。バスにモバイルワンを付けることで運行状況をクラウドに上げ、乗客は停留所やスマートフォンでその情報が見れるようになるシステム。
3例目は九電工の「Q-BEMS」。ビルの電力状況をクラウド内サーバーへ集約、電力使用量等を見える化することで、遠隔地からでもクラウド上で状況を把握、管理し、エネルギー消費量の削減が図るシステムだ。
ビジネス向けはモバイルとクラウドを組み合わせて使うという例が多く、また世界188ヶ国で利用できるグローバルタイプのSIMと、11カ国に対応したプライベートクラウドを組み合わせた環境を提供しているという。

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最後に今後の目指す方向が語られた。コンシューマー向けではLTE/光/Wi-Fiとシームレスに通信でき、どこでもアクセス回線を意識せずにつながる環境づくりの他、料金競争から付加価値競争へと転換し、そのためにもパートナーシップによる市場拡大を目指すという。
ビジネス向けでは人からモノへ、それらをオープン/クローズにつなぎ、マーケット、アプリに合わせて自由にカスタマイズできる小回りのきいたサービスの提供を目指す。更にそれらをセキュアな仮想トンネルを介してクラウドへ接続させ、情報収集をサポートする。

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更にビジネス向けとしては端末製造メーカーやコンテンツ事業社など様々なパートナーと組み合わせてサービスを提供していきたいと北村氏は話す。1年前と比べてプリペイドSIMが提供できるようになったのは、ユーザー課金形態の問題を解決できるため、新たなM2Mサービスの提供もできるようになっている。またOCNはプリペイドから月額支払のサービスへの移行もできるので柔軟なサービスを提供できると呼びかけた。

北村氏は最後にイベントの展示ブースにおけるSIMの自販機のコーナーを紹介し、講演を終えた。成田のエクセル東急ホテルより実機を借りてきて展示されており、体験した者には初期費用と2ヶ月分の料金が無料のSIMが配布されていた。

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