ユーザーのためのMVNOとは――総務省「モバイルフォーラム2015」

2015年3月20日 15時20分更新

3月17日、総務省及びテレコムサービス協会MVNO委員会は「モバイルフォーラム2015」を千代田区・日経ビルにて開催した。フォーラムは「モバイルサービスの更なる充実・多様化に向けて、今ユーザが望むモバイルサービスは何かを探る」ことをテーマに、主要なMVNO事業社が一同に介してサービスの現状とこれからの見通しについてを紹介。本記事ではフォーラムの概要を伝えたい。

 フォーラムは2部構成となっており、まず始めにジャーナリストの石野純也氏による「ユーザーやメディアの視点から見たMVNO」と題した講演が行われた。

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 MVNOは2014年以降にわかに注目を浴び始めたわけだが、石野氏は要因として4つの理由を挙げる。1つ目は「値段」。この点に関してはビックローブが2013年11月頃に1GBで1,000円というプランを開始したのが契機になったと語る。データ通信を節約せずとも気にしないで使える1GBという単位を月額1,000円で使えるようになる「現実的なプラン」の登場によって、MMOの7GBプランを使い切れていなかったユーザーの心理にフィットしたためだ。
 2つ目の理由として挙げられたのは「音声通話」。MVNOがデータ通信でけでなく音声通話、MNPにも対応したことで、一般ユーザーの1台目の選択肢として浮上するようになったと石野氏は説明する。従来もIP電話アプリなども使えたが、やはり080や090で電話できるようになり、緊急電話も使用できるというのは一般ユーザーには大きいようだ。
 3つ目に挙げられたのは「販路」。従来はネットのみでの販売に限られていたが、全国の量販店でも買えるようになったことでユーザーの目に日常的にふれるようになり、更に購入の簡易化、即日開通が行えるようになったのも大きいという。
 最後に挙げられたものは「SIMフリーモデル」の拡大だ。海外メーカーが相次いで参入し、更に日本メーカーも追随するようになったことで、ユーザーにとって端末の選択肢が増えたことも、MVNOの普及を後押ししたようだ。従来はドコモの中古端末を買うなどしなければならなかったが、現在ではハイエンドモデルだけでなくミッドレンジモデルも性能を向上させたことで、「そこそこ」使える端末が急増している。

 以上のような理由によって広まりつつあるMVNOだが、解決していかなければならない課題も顕在化しつつあると石野氏は語る。そもそもの問題として、MVNOの仕組みが消費者に理解されていない点があると指摘。そのため「格安」という言葉だけが先行するものの、仕組みが伝わっていないため、MVNOを利用しているのにドコモショップにサポートを求めてしまったり、端末ごとで対応周波数帯がバラバラなことを知らないために、十分な速度がでない・つながらないといった課題が出てきてしまっている。更に今後ユーザー数が増加してくることで、端末故障に対する補償も問題になってくるだろう。このあたりの課題は、如何にMVNO事業社側がユーザーに説明し、理解してもらうかがカギになってくるという。

 更に今後のMVNOの発展のためにも、石野氏は複数の提言を行った。まずは現在のまま価格競争を続けていくとジリ貧に陥ってしまうため、「価格」以外の軸を打ち出す必要性を訴えた。具体例として楽天モバイルやDMMモバイル、トーンモバイルのような、既存の顧客基盤とシナジーを生み出せるMVNOサービスを挙げる。事業社が既にコンテンツを保持しているため、それらを通じた「価格」以外のメリットを生み出せるだけでなく、大手ブランドを使うことの安心感をユーザーには提供できるためだ。
 純増数の公開による競争の可視化やネットワーク品質の開示といったMVNO事業社間での競争軸の定量化の必要性や、またウェアラブルやIoTの流れを取り込めるかどうかもカギになると石野氏は訴える。特に後者に関しては端末に応じたネットワークの設定や価格設定など、既存の大手キャリアでは手が出せない領域にこそ、MVNO事業社はメーカーと協力してサービス展開するチャンスがあるという。更に海外のMVNO事業社も、日本より海外のほうが普及率が高い分、業界として進んでいる部分もあるため参考にすべきだと語り、講演を終えた。

 次に講演を行ったのは三菱総合研究所 主席研究員の西角直樹氏。「多様化するモバイルサービス ~IoT、地方創生とMVNO」という題で、MVNOにはこれからどのようなビジネスの可能性があるのかを解説した。

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 まず始めにMVNOのこの1年間を振り返ってみると、一般での知名度が増しただけではなく、法制度の面からもMVNOの普及促進が後押しされているという。情報通信審議会の「2020年代に向けた情報通信の在り方」では市場に任せる部分と介入する部分のメリハリをつけることで事業社を動きやすくした他、総務省の「モバイル創生プラン」ではMVNOを大きな柱と位置づけ2016年内に1,500万契約を目標とするなど、明確に後押ししようという意気込みがみられると語る。

 法制度も含め、この1年間でMVNO事業環境の改善が起こったため市場は大きく拡大したが、今後もますますの拡大が見込まれると西角氏は話す。方向性としては事業社の集約と統合がすすみ、端末を起点とした垂直型サービスが拡大し、更には社会・産業・生活との融合という新しい形でMVNOサービスが伸びていくと氏は予想する。

 「社会・産業・生活との融合」の点でMVNOに最も期待されているのはIoTの分野だ。MVNOを介してあらゆるモノをインターネットにつなぎ、各産業でICT利活用がすすむことでモバイル通信市場とその周辺市場が連携して成長してくと予想されており、そこではMVNOは媒介者として役割が拡大・多様化していくという。
 幾つか例が挙げられ、M2M分野で世界最大の事業社の1つである海外の「KORE Telematics」は多数のグローバルMMOとの連携により規模の経済を追求し、単一のMMOよりも強みをもつ事業社となっている。また日本ではIIJが法人向けインターネット事業を活かしてのIoT(M2M)事業を展開していたり、パナソニックは自社が提供するデバイス機器全てをインターネットにつなぐことで、機器ベンダー兼MVNOというあらたなビジネススタイルを構築しつつある。
 このようにMVNOにはMMOにはない柔軟性、小回り、複数ネットワークへの対応、ケースに合わせた細かいソリューションの提案など、IoT分野に多いてはMVNOが得意とする要素へのニーズがある一方、MMO自身もIoT市場への参画を強めているため、お互い棲み分けながら発展する形が想定されると西角氏は説明する。

 またMVNOのこのような特徴は地方創生という面でも期待されているという。例としてフランスの郵便局のMVNOでは地域密着のサービスや過疎地域での拠点展開等が紹介された他、国内の事例でも愛媛CATVの地域企業と連携したMVNOサービスや、総務省の「ICT街づくり推進事業」として地域専用のスマートフォンを配布した唐津市など、既にMVNOと地方という観点から取り組みを始めている。
 MVNOは地域密着、地場産業とのつながり、複数の移動体ネットワークへの対応の可能性、地域の会社であることの必要性といった点で地方創生と親和性があり、地域に対するきめ細かなサービスが提供できる素地があると西門氏は話す。更に競争原理だけでなく社会政策や再分配製作の側面にも注目すべきだと述べた。

 3番目に登壇したのは日本通信 代表取締役副社長の福田尚久氏。ミニ講座として「MVNOサービスとは?」と題した講演を行った。

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 福田氏は日本通信こそが1998年にMVNOの仕組みを生み出したと強調し、同社がこれまでに展開し、業界をリードしてきたサービスを紹介した。
 氏はMVNOの使命を「携帯事業者ができない・やりたくない通信サービスを提供すること」という持論を語り、MMOではカバーできない細かいニーズを汲み取るために、様々な企業が全員参加で取り組まなければならないと説いた。

 後半の第2部では「モバイルサービスの更なる充実・多様化に向けて~MVNOは格安スマホなのか~」と題したパネルディスカッションが執り行われた。クロサカタツヤ氏をモデレーターとして、先に講演を行ったジャーナリストの石野純也氏、全国地域婦人団体連絡協議会の長田三紀氏、MVNO委員会副委員長の島上純一氏、イオンリテールの橋本昌一氏、シャープの新井優司氏、NTTドコモから阿佐美弘恭氏の計7名でディスカッションが行われた。

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 そこで課題として大きく取り上げられたのはユーザーに対するサポート体制だ。ユーザーの裾野が増えるにつれ、MMOとMVNOの違いを意識しないユーザーが増えていき、そうしたユーザーに対する理解は勿論、サポートの窓口も課題となっている。
 更に事業社毎に回線の品質もバラバラな点なども指摘され、今後はただユーザー側にリテラシーを求めるだけではなく、事業社間でガイドラインやレギュレーションを定めていく必要性などが議論された。

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