NTT東日本の光サービスの軌跡――Cabling EX 2014「NTT東日本のネットワーク事業戦略」

2014年10月2日 14時42分更新

9月18日、秋葉原UDXにてネットワークの専門展「Cabling EX 2014 −第18回ネットワーク工事機材展−」が開催された。その中の特別セミナーとしてNTT東日本の池田敬氏が登壇。「NTT東日本のネットワーク事業戦略 ~光サービスの「過去」「現在」そして「未来」~」と題し、NTTがこれまで行なってきた光回線事業のこれまでについて説明した。

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「NTT東日本のネットワーク事業戦略 ~光サービスの「過去」「現在」そして「未来」~」
東日本電信電話株式会社 ネットワーク推進本部
設備企画部 設備計画部門長 池田 敬

氏は始めに自分の経歴を紹介した。入社してネットワークシステム開発センタに配属されて以来20数年間、光回線と向き合ってきた経歴を持つ。平成13年に民間向けの光フレッツの開始が開始された際、氏は東京支店の設備部設備企画担当でありフレッツの黎明期に携わっている。当時はファイバー不足の中、どうやってやっていくのかという渦中の中にいたという。その後保全の仕事をしたり、神奈川支店の設備部長に務めたりと、現場の最前線で指揮をとってきた。今年からは設備企画部設備計画部門で、フレッツが光回線を卸すことで話題となった「光コラボレーション」をメインに手がけている。

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光回線事業は現在は成長が鈍化してきており、このまま下がっていくのか、更に飛躍するのか、その瀬戸際にいると氏は話す。講演は光回線事業の黎明期・成長期・成熟期の三部構成で行われた。

第一部「光黎明期の取組」

・光開通納期
黎明期で最も課題となったのは光回線の開通納期であった。光開通納期を如何に短縮するかが至上命題であった反面、設備は整っておらず、光ファイバーは枯渇状態にある。そこでとにかくファイバーを打ち込む仕事から始め、日本中に光回線を広げていった。

しかし地下にファイバーを張り巡らせるので予算は手一杯であり、地上の設備に手が回らない状態だったという。そのため設計だけは作っておき、少しでも納期を短縮しようとしたが、開通プロセスにも問題があり、当時はバケツリレーのように管理していた。(画像IMG_1370参照)申し込みが増える→滞留数がどんどん増える→工事があふれる→…という悪循環に陥っており、1つのプロセスを改善したら次が顕在化という流れの繰り返しである。これを改善し続け、ようやく設備に目を向けられるようになったと語る。

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配線ケーブルを張り巡らせるのは困難な事業だったが、徹底したフローの見直し、パラレル化でプロセスの改善を図り、更に需要を予測して客に近いところまで配線ケーブルを張り巡らせることを行なった。その結果、開通数が3倍に伸び上がっている中で10年かけて納期を60%短縮を果たしている。これによってNTT東西は世界で1番の開通力を誇り、100%顧客の要望に応えて開通できるようになったと池田氏は語る。

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・光故障派遣率
当初、古いメタルの設備から新しい光設備にすることで故障は少なくなると考えていたという。しかし光回線にすることでかえって故障率は2倍にも跳ね上がってしまった。理由はファイバーの故障ではなく、宅内の設備(VDSL、ルーター等)の故障が多かったためである。
VDSLの改善には、熱暴走防止の為の熱故障対策、スタックしにくいファームウェアへのアップグレード、古いメタルのためにノイズが発生しやすい場合があるので、フィルタの挿入によるノイズの抑制等が行われた。また、ある年には雷による故障が多発し、VDSLの故障だけでなくホームゲートウェイの故障も頻発した。その際には雷防護アダプタのつけることで対策。
こうした努力を積み重ねていき、ここ10年で1/4に故障を減らせ、極端に言えば1ユーザーにつき40年に一度の頻度でしか故障派遣しなくて済むようになったと氏は語り、その程度までのサービスの提供ができていると自負する。

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第二部「光成熟期の取り組み」

第二部では光成熟期、つまり現在の取り組みが紹介された。キャッシュの回収のフェイズ、そのため如何にコストを下げるかにこの現在は注力しており、電話局の中の保守・運用を楽にする取り組みに主眼が置かれている。

・ネットワークのシンプル化・大容量化
現在、トラフィック量は急速に増大してきており、わずか3年間で2.5倍に増えている状態にある。これに合わせて設備投資していてはお金が間に合わないので、如何にビット単価を下げるかが勝負どころであると池田氏は説明する。その方策としては、従来ROADMの10G伝送という形でネットワークを組んでいたが、今後はPTSの100G伝送伝送網へシフトするのは1つの方法であり、また同時に古い電装網をなくそうともしている。現在は最新のNGN網に一元化している最中であり、新旧両方の保守をしなくても済むことで運用が楽になり、更にコストも下げられる。伝送網に関してはほぼ目処が立ってきており、来年度にはほぼ一元化できる見通しという。

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・開通コスト
開通コストは平成15年を100とすると、現在は16までコストを落とせており、8割以上減らすことに成功している。そのコストの内訳も年々変化してきており、ユーザのコストが増えてきている(アクセス:様々なユーザーのためのコスト、ユーザ:当該の客のためのコスト)。

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昔のアクセスの比率が多かったのはそもそも設備がなかったからであり、今はユーザーのコストを如何に下げるかということで、以下の2つに取り組んでいる。

事前接続することで昇柱回数の削減
従来開通工事の際には電柱に2度登る必要があったが、配線ケーブルを引く際に予めスプリッターを結ぶことでその手間を省いた。スプリッターから線を切ってユーザーの家までつなぐのはかなり慎重な作業であり、従来はリスクの恐れからできなかったことだが、その確認する技術を確立させたこそ昇柱回数の削減wp果たせたという。

無派遣工事の推進
メタルのころからやってきたこと(ローゼットからMJ化の推進)であり、同じことを光回線でも行なっている。家を建てる際に光コンセントを予め壁に設置してもらい、あとはホームゲートウェイとフリーコードを客につなげてもらうだけで済むような環境づくりに務めているという。

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・VDSLから光配線へ
コスト削減としてVDSLから光配線への転換も行なっている。集合住宅の場合、建物までは光ファイバーであるが建物内の配線はメタルである、VDSL方式が多い。しかしメタルの配線は故障率や電気代等、運用コストがかかり、そのために光配線方式を推進している。
改善策として、まず建物のVDSL集合装置があったところに併設して光配線方式のスプリッターを設置。そして転居時にVDSL装置を閉塞して使えないようにし、新規入居時には新たに光配線方式を提供することで、徐々にだがVDSLから光配線方式に変えていっている。平成22年度からVDSLを減らしてきており、時間はかかるが地道にやっていくしかないと語る。

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・バックオーダの削減
バックオーダとは開通工事に行ったものの、開通できなかった工事のことであり、収益が上がらない一番の問題であるという。工事全体の8%くらいで起こっており、その原因の8割が客の不在にある。その点は受付段階でのアナウンスの徹底しかないが、配管起因と設備起因によるバックオーダをなくそうと推進している。配管起因は木が邪魔になって配管できないケースなどの場合、どれだけ配管を通せるか、工事班単位のミクロの視点で改善を行っている。設備起因の場合は、工事員がバックオーダ判断前にNTTに必ず連絡するように現場の工事員に徹底し、NTT側がその場で代案を出すようにしている。事前連絡率の高めるほどバックオーダが減る形になっていると池田氏は説明する。

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これらに関連することだが、NTTでは階段工法による光サービスの提供も行なっている。川崎市の市営住宅のケースでは配管もない状態だったが、露出配線により光回線を実現させるなどしている。この川崎市の例のように如何に光ファイバーを通っていないところに通すかが、今後の需要拡大の鍵になると池田氏は語る。

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・ビジネスユーザへの開通力強化
この点は今年度の大きな柱としてやっているという。光回線の純増数のうちビジネスユーザの比率がどんどん増えており、更に個人ユーザーよりもビジネスユーザーの方が長く使ってもらえるためだ。ビジネスユーザーを大切にし、必ず開通させるというのが今年度の取り組みとなっている。

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しかし実際には雑居ビルやテナントビルなど非常に開通し辛いケースも多く、個人ユーザーよりも取り消し率が高い。そのため如何に開通させるか一番のポイントになっており、そのため以下の2点に注力している。

通線の徹底
通信建設業の協力会社に丸投げ、任せるだけにせずNTTの直営班を設置し、その直営班がどうやって開通させるかのノウハウを蓄積、それを各通建会社に水平展開する取り組みを行なっている。また現場で開通できなかった場合の、直営の緊急支援班も設置した。

ユーザーの端末の光化対応
ユーザーの機器によっては光に対応していないのが最大のボトルネックになっている。ISDNアダプタの設置によってなんとかなってるが、それでも100%できるわけではないため、
独自の検証ラボを持つヘルプデスクを設置。現場で開通できなかった場合、ヘルプデスクに連絡することで、すぐに開通方法を提案できる環境を整えている。

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こうした取り組みの他、今年7月から大きく体制を入れ替え、ビジネス開通力強化に向けた体制も構築。これまでは多拠点における同時工事、サービスが違う商材の同時開通、夜間時間の工事等々の要望に対して1件ずつしか意識してこなかったが、全国レベルで統合的に管理できるようにしたという。ビジネス開通サポート担当を設置し、業種やチェーン店などそれぞれにカスタマイズした開通方法を現場レベルにまでしっかり落としこんで管理できるようにし、ここまでできて、できていないということをユーザーに対してフィードバックできる体制作りを行なっている。これらは未来に向けた布石と意識して取り組んでいると池田氏は説明する。

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第三部:今後の飛躍に向けて

・光コラボレーションモデル
上述してきたビジネスユーザーへの注力は、この光コラボレーションモデルを意識している。B2B2Cが光コラボレーションのモデルであり、光サービスを卸して様々な事業者に提供することで、エンドユーザーにNTTだけでは提供できない、多彩な価値を創出するのが狙いだ。

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2020年の東京オリンピックはこの光コラボレーションの集大成になると位置づけていると述べ、講演を終えた。

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