3月2日、NTTドコモは国内最速となる下り375Mbpsの通信サービスと、3.5GHz帯を使用した下り370Mbpsのサービスを2016年6月より提供開始すると発表した。
同日ドコモは都内にてネットワーク戦略説明会をメディア向けに開催。同社の取締役常務執行役員の大松澤清博氏が登壇し、これら新サービスに加えて基地局を利用した災害対策の取り組みについて紹介した。
PREMIUM 4Gの進化
ドコモは昨年3月よりキャリアアグリゲーション等のLTE-Advancedを活用した通信サービスを「PREMIUM 4G」として提供してきており、昨年10月には3つの周波数帯域をまとめることで下り最大300Mbpsを実現させ、対応基地局数も今年度内に20,000局以上に達する見込みであるなど、2020年の5G実現に向けてネットワークを進化させてきた。その成果か、総務省が定めたガイドラインに基づく実効速度測定においては他キャリアよりも良好な結果を出している。
今回発表された下り最大375Mbpsの新サービスは2GHz帯(112.5Mbps)、1.7GHz帯(150Mbps)、800MHz帯(112.5Mbps)を組み合わせることで実現する。特に800MHz帯はこれまで3GとLTEの両方で使用していたが、一部エリアより3Gを停波することでフルLTEし、下り最大75Mbpsから112.5Mbpsへと引き上げられる。ただし日本全国で800MHz帯の3Gを停波させるのではなく、3G利用のトラフィックをよく踏まえた上で、2GHz帯だけで十分カバーできると判断したところからフルLTE化を図っていくと大松澤氏は説明した。
また新たに使用する3.5GHz帯の利用について大松澤氏は「8車線分の新しい道路を作るに等しい」と語り、通信の混雑緩和に期待を寄せる。3.5GHz帯は他周波数帯と異なりTDD方式のLTEで運用されるが、TDD方式は上り通信と下り通信で同じ周波数を利用する都合上、上り速度はFDD方式よりも遅くなってしまう欠点がある。そこでドコモは3.5GHz帯を他周波数帯と組み合わせるキャリアアグリゲーションで運用することでTDD方式とFDD方式の両方を良さを活かし、上り通信は最大50MbpsのFDD方式の他周波数帯で行い、3.5GHz帯はほぼ下り通信で利用するという。1.7GHz帯と組み合わせることで下り最大370Mbpsを実現する。また3.5GHz帯は通信が混雑するエリアをカバーするアドオンセルとして展開する予定だ。
これら下り最大300Mbpsを超えるサービスは6月より都心部から集中整備され、337.5Mbpsのエリアは比較的広く展開されるものの、3.5GHz帯のエリアは東京、新橋、品川、渋谷、新宿、池袋といった混雑エリアに限られ、375Mbpsのエリアは更に極所的に展開される模様だ。
ドコモは2020年の5G実用化に向け、2017年度にはアンテナ送受信技術MIMOの高度化により500Mbps超の実現を目指すとしている。
ネットワーク信頼性の強化
新サービスの説明の一方で、災害対策など新たな取り組みも紹介された。災害対策については、災害時専用に通常基地局とは別に設置された大ゾーン基地局のLTE対応、南海トラフ地震等への災害対策として中ゾーン基地局の設置・展開をそれぞれ予定しているという。また災害発生時の電源確保のため石油連盟とNTTグループが「災害時の重要施設にかかる情報共有に関する覚書」を締結。停電が発生しても非常用発電機用燃料の確保が担保されるため、通信サービスが停止する可能性がより低くなった。
LTEネットワークを活かした災害予測についても取組みを開始しており、地震科学探査機構(JESEA)とは「リアルタイム地震予測」の実証実験への協力。全国16箇所の基地局に衛星測位機器を用いた地殻の変化を捉える装置を取り付けることで、収集した地殻変動のデータをモバイル通信でリアルタイムにJESEAに提供する。
更に津波監視にも取組みを始めており、津波発生時の沖合の様子を監視するカメラを全国16か所の携帯電話基地局に設置することで津波発生時の沖合の海面や周辺の様子を監視し、ネットワーク設備復旧作業に活用していくという。
またコアネットワークにおいては最新の仮想化技術を今月より導入。これは複数のベンダーのソフトウェアが同一の仮想環境の上で展開される構成となっており、「世界初」の取り組みであると大松澤氏は説明。通信混雑時に自動的に性能を向上させるオートスケーリングや、設備故障時に影響を最小化させるオートヒーリングといった機能が採用されているという。今年度内はまず試しながら導入し、仮想化の効果が確認され次第、2017年度までに一気に導入を拡大してくという。