「SoftBank World 2019」が、東京芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で多数の講演と展示会場が用意され、二日間にわたって開催された。同イベントは8回目を迎え、今年のテーマは「テクノロジーコラボレーションで、世界を変えていこう。」ということで、ソフトバンクが注力する「IoT」「AI」「ロボット」「RPA」「クラウド」などが中心だった。
初日の基調講演には孫正義氏が登壇し、「日本はいつの間にかAI後進国になってしまった。インターネット黎明期と同様、まだ遅くはないが、AIに対して早く目を覚まさないとやばい」と強くメッセージを発した。AIをビジネスに活用できていない日本企業や、孫氏が投資に値すると考えるベンチャー企業が少ない日本の現状への孫正義氏流のエールだった。ソフトバンクは現在「群戦略」を展開している。具体的には、様々な分野で活躍し、急成長しているNo.1、もしくはNo.1に匹敵する企業に対して投資を行い、その投資先のシナジーで効果を最大限に出そうという戦略。
孫氏は冒頭に「人間の進化はこれで終わりではない、AIによって更に進化する」と訴え、勘や経験による判断をもっと科学的でデータによる推論が行われていく。人間の進化はとどまらず、進化がやってくるという。たとえば、天気予報は漁師に聞くよりも今はコンピューターのほうが正確だ。これからはAIのほうがはるかに正確性が高くなる時代がやってくるだろうと孫氏は未来像を描いた。
講演中、ソフトバンク・ビジョン・ファンドで出資を受ける約80社の企業のうち、4社の企業ゲストスピーカーに4名を迎え、それぞれの事業についての説明を行った。
◇OYO Hotels & Homes Founder & CEO リテシュ・アガルワル
立ち上げから6年で、ホテル予約サービス「OYO rooms」を世界第2位のブランドに押し上げた現在25歳のリテシュ・アガルワル。全世界の客室の9割以上を占める中小規模のホテルや民泊に着目し、データ予測を活用したスピーディな契約締結、デザインアルゴリズムによる客室改装で稼働率を倍増させたことを紹介。AIの活用がOYO成長の“秘伝のたれ”というワードを何度も繰り返しながら紹介。
◇Grab Group CEO and Co-Founder アンソニー・タン
配車アプリだったGrabが今ではフードデリバリー、ショッピングや送金など、生活をシームレスにサポートするものになっており、その根幹に膨大なデータ分析が存在していることを紹介。
◇Paytm Founder & CEO ビジャイ・シェカル・シャルマ
インドで急成長中のデジタル決済会社Paytmのビジェイ・シェカル・シャルマは、Paytmが蓄積したデータを活用して信販会社ではなく店舗自体が信用貸しを行う「リアルタイムクレジット決済」などの事業を紹介。
◇Plenty CEO and Co-Founder マット・バーナード
米国でインドア農業を展開するPlentyのマット・バーナードは、データとAIにより農作物の味や栄養価、生産方法を最適化し、完全無農薬の野菜を年間数十回も収穫する同社のビジネスモデルを紹介。
講演の最後に孫氏は、「冒頭に少し辛辣な言い方で、日本はAIの後進国になってしまったと言ったが、今からでも全く手遅れではない。でも目覚めないとヤバイ。」と繰り返し、「なんのために、このAI革命をやるのか、それは我々人間が幸せになる為。AI革命が進むと人間が置いてきぼりになって、不幸せになるんじゃないか、仕事を奪われて存在意義すら疑われる、そういう風に悲観的な見方をする人もいるが、決してそうではない。AI革命は、人間を幸せにするためにあるんだと、私は心からそう思っている。」と語り、締めくくった。