【第21回東京国際ブックフェア】hontoで広がる電子書籍の世界――大日本印刷ブース
2014年7月9日 12時06分更新
7月2日から5日にかけて、東京ビックサイトにて国内最大の本の展示会「第21回東京国際ブックフェア」が開催された。電子書籍の最新サービスなどを展示する「第18回国際電子出版EXPO」など5つのイベントも併催されており、過去最多の1500を越える出展ブースが並んだ。DenpaNewsでは本イベントにおいて展示されていた電子書籍・出版に関するブースについて紹介していきたい。
本記事においては、国内の大手印刷会社である大日本印刷(DNP)のブースを紹介する。
・honto
hontoはDNPが運営するハイブリッド書店サービスである。書店と通販サービス、電子書籍を連動させ、紙と電子の両方の強みを生かしたサービスを行なっている。電子書籍はスマートフォン、タブレットなどで読めるのは勿論、リアル書店とも連携して店頭のPOPや書店員のレビューなども閲覧できる。またhontoで購入した本は紙、電子問わずに一元管理することができ、ネットだけでなく店で買った本も同様に管理できる。
以上のような便利なサービスを備えるhontoだが、DNPのブースでは更なるサービスを展示していた。
・デジタル新聞ダイレクト by honto
専門・業界新聞の電子版を購入できるサービスだ。現在はパソコンからの閲覧に限られているが、スマートフォン、タブレットでの閲覧も準備中だという。
紙の新聞と同じタイミングで購入でき、新聞紙面と同じレイアウトの記事をいつでも、どこでも読むことができる。購読者側は企業内での複数人での同時閲覧や社外への持ち出しが可能になり、また発行側も必要な専門情報を迅速に届けることができ、読者の利便性に応えることで新規購読者の獲得につなげることができる。
今ところ建設・住宅分野、食品・飲料分野、メディア・プロモーション分野の新聞を準備しているという。
・honto for ニンテンドー3DS
こちらはニンテンドー3DSで読める児童書専門書店だ。ニンテンドーeショップから無料でダウンロードできるソフトであり、そこで作品を購入する仕組みとなっている。
電子書籍市場では、子供のスマートデバイスの所有率が低いことから児童書を電子書籍化する出版社が少なく、その点をカバーする目的で始まったサービスである。ニンテンドー3DSで読めるようにすることで、子供も手軽に電子書籍に触れる機会をつくっていく狙いだ。児童書だけでなく学習漫画も取り揃える他、読んだ冊数によってトロフィーが送られる機能など、子供に合わせたソフト作りを心がけている。
・OKURIBON「おくりぼん」
7月1日よりスタートした、本にリボンを添えて贈る「OKURIBON」キャンペーンだ。「本を贈る」ことを文化として根づかせたいという狙いがあるという。
全国23のキャンペーン実施店では、作家や書店員が「OKURIBONブック・コンシェルジュ」となり、結婚記念日や子供にプレゼントしたい本など、コンセプトに合わせてお薦めする書籍を陳列した「OKURIBON特設コーナー」が設置される。ギフト用に書籍を購入した客には、特製しおりの提供や特製の包装紙とシールによるラッピングサービスを無料で行うという。
またネットストアからでもギフトラッピングとメッセージカードを付けて贈れる他、書店員や作家の推奨本を同様にみることができる。電子書籍も「おくりぼん」として送ることが可能だ。
・hontoカフェ
ブースではhontoカフェの体験コーナーも設けられていた。hontoカフェとは、DNPが運営する体験型のショールーム「コミュニケーションプラザ ドットDNP」内にある電子書籍を体験できるカフェスペースのことである。
ハイブリット書店サービスである「honto」のコンセプトカフェであり、コーヒーや軽食を楽しみながら、備え付けのタブレットで「立ち読み」コンテンツを体験できる。如何に電子書籍に気軽に触れてもらうかを意識されており、hontoで販売中の作品の中からおよそ100冊を自由に試し読みすることが可能。現在はワールドカップに合わせてサッカー雑誌やサッカー関連書籍の試し読みができるそうだ。期間は7月14日まで。
・honto pocket
従来の電子書籍リーダーといえば、ネットに接続して自分で書籍を選んで購入し、ダウンロードするものが一般的だ。しかしネットに接続するのは勿論、会員登録など煩雑な手間があり、そうしたことが苦手な人にとっては電子書籍はハードルが高いものとなってしまっている。その点、この「honto pocket」はそうした人にも手軽に電子書籍に触れてもらえるような作りになっている。
購入時点でコンテンツはインストールされており、完全オフライン仕様だ。単三電池で駆動するので手に入れたらすぐ読めるようになっている。大きさはだいたい文庫本サイズで手に馴染みやすい。操作も物理ボタンで行うので簡単だ。また「インクルーシブデザイン」を心がけており、高齢者や弱視の人など、全ての人が読書を楽しめる環境の提供を目指しているという。
ブースでは早川書房のアガサ・クリスティ全集(100冊)や双葉社の「若さま同心 徳川竜之助」全13巻がインストールされ、ハードカバーの装丁を思わせる専用のパッケージに入れられて展示されていた。本棚に紙の本と並べても違和感はないだろう。通常の文庫本ならおよそ150冊入る容量なので、このように全集やシリーズもの、専門書やプロがセレクションしたものなどをセットにし、それぞれ専用のパッケージにして販売する予定だ。価格は紙の本を揃えるよりは安価になるようにするという。
また「LIFE BEST」という企画も展示されていた。缶の中には非常時に読みたい本などがインストールされたhonto pocketの他に包帯や薬、懐中電灯などが入れられており、災害時などに持ち出せるパケージとなっている。電池さえあれば読めるネット環境がなくても読めるという利点が生かされており、honto pocketの1つの可能性を感じられる。
現在のところコンテンツの出し入れは想定しておらず、後から追加するといった使い方はできない。しかしブースの担当者によれば、将来的には本を何冊も運ぶのが難しい高齢者のために、図書館などでコンテンツの入れ替えができるようにし、honto pocketを用いた電子書籍の貸出のようなことをやっていきたいという。
・スマートグラスを利用した読書体験
最後にエプソンのスマートグラス「MOVERIO」を利用した新たな電子書籍・出版の試みを紹介したい。
MOVERIOを使用して電子書籍を読むときのメリットは両手を自由に使える点である。本体のジャイロセンサーを利用することで、首を上下左右にふることでページをめくったりスクロールすることができる。
既存の印刷物を利用した使い方も案内されていた。展示ではMOVERIOをかけてモナリザのページを見ると、ルーブル美術館の360度のパノラマ画像が表示された。勿論首を動かすことで視点を変えることもできる。またコミックの表紙を認識すると自動的に映画の予告動画が再生されたりと、新しい読書体験をすることができた。
DNPとしてはこうした試みで新たな読書スタイルを提案し、出版コンテンツの楽しみ方を拡げることを目的としている。観光案内やテーマパーク、博物館だけでなく、工場などのビジネスシーンでの活用も目指しており、今後も注目していきたい分野である。
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