KDDI、国内キャリアでは初となるFirefox OSスマートフォン「Fx0」発売――ウェブの「ものづくり」を徹底支援

2014年12月25日 12時40分更新


 12月25日、KDDIは国内キャリアでは初となるFirefox OS搭載スマートフォン「Fx0」の発売を開始した。先日開催された発表会で田中社長は「ビジネスのことを全く考えていない」と述べるなど、いわゆる”ギーク”向けの端末となっている。

 まず始めにFirefox OSについて簡単に説明したい。Firefox OSはパソコンのブラウザ「Firefox」やメールソフト「Thunderbird」を開発しているMozillaによって開発されたスマートフォン・タブレット向けのOSだ。iOS、Androidに続く「第3のOS」として最も注目されているOSであり、海外では新興国を中心にシェアを伸ばしてきている。その特徴はオープンソースのOSとして開発されていることにあり、利用者は無償で使用・カスタマイズできるようになっている。そのため安価に端末を開発でき、1万円を下回る価格で販売されている端末もあるほどだ。
 またFirefox OSのアプリはJavaScriptとCSSといった「HTML5」で作成されるwebアプリであることにも特徴がある。そのため開発が容易であることや、webアプリであればFirefox OSは様々なアプリをスムーズに動作させることができるなどのメリットが挙げられる。
 Firefox OSは上述したように低価格スマートフォンに採用されることがほとんどであり、ハイスペックスマートフォンを志向する日本市場では展開が難しいと思われてきた。しかし今回の「Fx0」以前に「Flame」という開発者向けの端末が2014年夏に日本で一度発売されたのだが、瞬時に売り切れてしまった経緯がある。数こそ多くないものの、Firefox OS搭載端末を望んでいた日本のユーザーにとって、それだけ「Fx0」は待ち望んだ端末であったはずだ。

DN20141225001_002

 「Fx0」はLGエレクトロニクス製で、これまで海外で発売されてきたFirefox OS搭載スマートフォンと比較すると最先端の端末となる。液晶は4.7インチHD IPS液晶ディスプレイを搭載、CPUにはクアッドコアのMSM8926 1.2GHzを採用し、RAMは1.5GB、ストレージ容量は16GBとなっている。メインカメラは800万画素、インカメラは210万画素で、LTE通信にも対応しており、日本の基準で言えばミドルスペックのスマートフォンとなっている。
 特徴はデザイナーの吉岡徳仁氏によって手がけられたこだわりのデザインにある。Firefox OSのオープン性を象徴するスケルトンボディとなっており、中の機器が見えるようになっている。ホームキーにはFirefoxロゴをあしらい、更にこのデザインに合わせて専用のネジまで開発したこだわりようだ。
 microSDXC、NFCに対応し、ネイティブアプリとしてLINEやFacebook、TwitterやNAVITIMESがインストールされている。日本語入力にはオムロン社製 iWnn IME for Firefox OSも搭載されているので、文字入力で不便を感じることは少ないだろう。

 メールとインターネット、SNSを少し見るくらいでは充分な機能を持つとはいえ、やはり万人には勧められないだろう。「Fx0」、およびFirefox OSがギーク向けと言われる所以は、その最大の特徴が「つくる」ことにあるからだ。
 これまでもKDDIはFirefox OSを採用した開発ボードの「Open Web Board」や、GUIを採用した開発ツールの「Gluin」といった開発環境を提供してFirefox OSを支援してきたが、この「Fx0」にもその意匠は込められている。例えばプリインストールされている「Framin」というアプリでは、プログラミングの知識がなくても画像や動画と「Fx0」のセンサーを利用したオリジナルのロック画面が作成できる。また「Fx0」の外観も3Dプリンタ用のデータを公開することで自由に変えられるようにするなどの徹底ぶりだ。
 Web技術を通してモノとWebがつながる世界観「WoT (Web of Things)」も意識しており、「Fx0」同士をタッチするだけでローカルネットワークを構築して写真や動画を共有できる「Web-cast」機能を搭載。また「Fx0」のウェブサーバー機能と開発ツール「Gluin」を組み合わせることによって様々なデバイスとリンクすることも可能だ。ここに3Dプリンターと開発ボード「Open Web Board」を組み合わせることで、個人でも「WoT」の世界を創造できる可能性がある。
 KDDIの「au Firefox OS Portal Site」では各々が作成したツール等を公開できる「Creator Showcase」というサイトも準備するなど、「Fx0」を用いたクリエイティブな活動を徹底支援する姿勢だ。
 
 
 端末料金は一括払いの場合、4万9680円。料金プランは「Fx0」専用のデータプラン「LTEフラット cp(f・2GB)」が用意されており、月間データ容量上限が2GBで月額3,500円となっている。更に新規契約 (MNPを含む)の場合は「Fx0おトク割」が適用され、最大2年間基本使用料が0円となる。まとめると月額使用料は以下の通り。

・新規契約(MNP含む)
基本使用料:LTEプラン(「Fx0おトク割」適用時) 0円 + データ定額サービス:LTEフラット cp (f・2GB) 3,500円 + インターネット接続サービス料:LTE NET 300円 = 3,800円
・機種変更
基本使用料:LTEプラン 934円 + データ定額サービス:LTEフラット cp (f・2GB) 3,500円 + インターネット接続サービス料:LTE NET 300円 = 4,734円

 なお「電話カケ放題プラン」とセットでの加入が必要になるが、「データ定額2/3/5/8/10/13」も選択可能だ。12月25日からau Online Shop、au SHINJUKU、au NAGOYA、au OSAKA、au FUKUOKAで発売。2015年1月6日からは全国のauショップなどでも購入できるようになる。
 
 
 以前から噂されていたが、ついにKDDIのFirefox搭載スマートフォンが発売された。徹底的に「つくる」ことに拘っており、人によってはこれを機にweb製作に携わってみようと思わせる魅力は詰まっている。またFirefox OSはまだまだ発展途上のOSをであるため、その進化の過程を最前線で楽しむこともできるだろう。
 一方で残念な点は価格だ。やはりFirefox OS自体を1台目のスマートフォンとして運用するのはまだリスクがあるだろう。そのため多くのユーザーは2台目として使用することが想定されるが、MVNOが普及しつつある今、月間通信容量2GB/980円で運用できるのを考えると、月額3,800円というのは維持費としてはかなり高い。子会社であるUQ mobileの格安SIMでの運用も可能にすべきではなかったのではないだろうか。
 また端末も日本ユーザーに合わせてミドルスペックに仕上げたのだろうが、日本でのFirefox OSの普及を考えるならばデザインも簡素にした安価な端末でも良かったのではないか、という疑問も湧いてくる。Androidスマートフォンならば同等のスペックで3万円大で購入できることを考えると、Firefox OS自体がオープンソースで作られている分、価格で壁を作ってしまっているのは皮肉な戦略ミスだと指摘せざるをえない。本当に「ビジネス抜き」で考えているならば、この辺りも新しい試みを取り入れて欲しかった。

 端末のスペックは以下の通り。
・OS:Firefox 2.0
・CPU:MSM8926 1.2GHz クアッドコア
・メモリ:1.5GB
・本体容量:16GB
・外部メモリ:microSDXC(最大64GB)
・液晶:約4.7インチ IPS液晶
・解像度:HD(1280×720)
・バッテリー容量:2370mAh
・連続待受時間:約720時間(LTE)
・メインカメラ:800万画素
・インカメラ:210万画素
・サイズ:約139(H)×70(W)×10.5(D)mm
・重量:約148g
・WiFi規格:IEEE 802.11 a/b/g/n
・対応周波数(国内):4G LTE(800MHz/2GHz)/3G
・Bluetooth3.0対応
・カラーはゴールドのみ

関連カテゴリー