【SoftBank World 2014】ソフトバンクが臨むリアルタイムコンピューティングの時代――基調講演「クラウドの進化がもたらすビジネス革命」

2014年7月24日 12時00分更新

 7月15日、16日にザ・プリンスパークタワー東京にて法人向けイベント「Softbank World 2014」が開催された。本イベントは2012年から始まって今年で3回目となり、基調講演の他、ソフトバンクグループからだけではなく多数の企業によるモバイルやクラウドに関するセッションや、サービス・製品の展示が行われ、のべ聴講人数は18000人に達するなど賑わいをみせていた。

 本記事では2日目に行われた基調講演について取り上げたい。2日目の基調講演は、ソフトバンクグループより宮内謙氏、ソフトバンクとの合弁会社が発表されたVMware社よりパット・ゲルシンガー氏、Pivotal社よりレオ・スピーゲル氏、そしてGoogleより河合敬一氏の計4名によって行われた。
 Googleの河合氏による講演は【SoftBank World 2014】Google Mapsによるビジネス変革――基調講演「Google Maps for Business」を参照してもらいたい。

ソフトバンクテレコム株式会社
ソフトバンクモバイル株式会社
代表取締役副社長 兼 CEO
ソフトバンク コマース&サービス株式会社
代表取締役会長
宮内謙氏
「クラウドの進化がもたらすビジネス革命」

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1章:テクノロジーの進化

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 宮内氏はまず始めにテクノロジーの進化についてふれた。昨日の孫氏の講演にもあったが、CPUは2000年からの20年間で100万倍に達すると予測され、その過程で人の脳超える処理能力を持つと言われている。既にiPhone5Sはアポロ11号の270倍の性能に達しており、その位のテクノロジーが手のひらの中にある。
 あわせてネットワーク、ストレージの進化も進んでおり、そこにCPUが加わるとリアルタイムネットワークの世界へと突入すると宮内氏は予測している。併せてiPhoneが我々のライフスタイルを変えたように、テクノロジーの進化によって世界は変わると強調する。コンシューマーだけでなく、企業の方にも一気にテクノロジーは入ってきており、ビジネスの進化も一気に起こっているという。

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2章:ソフトバンクの進化

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 こうしてテクノロジーが進化していく中で、ソフトバンクの強みは何なのか、宮内氏は1番の強みは先進のICTを活用することにあるという。創業当時から1番こだわってきた点であり、何か新しい技術があるとアメリカに渡り、まずは使ってみる姿勢であり続けてきた。ICT活用を徹底的にやっている会社だと思ってもらいたいという。
 そしてICT変革により、業務効率を半分以下に削減することができた。社員を作業員にしないという発想の下、社員に常にクリエイティブな仕事をさせるため、コンピューターに任せられる仕事は全て任すべきと主張する。

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・サーバー統合
 ICTの導入例としてサーバーの統合を挙げた。創業からシステムは独自で作ってきたが今は関連会社も含めてシステムは全て1つにまとめて、VMwareのサービスよってサーバーを70%削減し、コストは半分以下に抑えつつも顧客数は3倍に増やすことができた。システム統合に当たっては社員が使いやすいものをシステムというのを心がけ「Smile」というシステムを導入、作業工数を半分にすることに成功した。何よりも、社員が使いにくいものは最悪だと話す。

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・受付システム
 次にソフトバンク本社の受付システムについてふれた。従来は待ち時間に最大15分かかり、社員にも煩雑な手間がかかってしまっていた。自動受付システムの導入により待ち時間を15分から2秒に、更に社員の手間も省くことができた。

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・ソフトバンクショップ
 最後にソフトバンクショップの例を挙げる。ソフトバンクショップには大きな改革が起こっており、顧客満足度も大幅に上げることができたと語る。iPadとクラウドの活用により、紙とPCをベースにしていた多くの設備、大連においていた登録センター等が必要なくなり、大幅なコストダウンを果たしつつも、契約の際に登録にかかる60分から15分に短縮することができたという。

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・さらなる進化
 宮内氏は仕事はスピードを上げなければいけないと考えており、それはリアルタイムコンピューティングの時代において、さらに作業のスピードを上げることが可能になる。一瞬で伝える、その時代が遂にやってきたと述べる。
 まずIoTだ。ネットに接続されるものは2020年には500億にもなるといい、あらゆるものがネットにつながり、リンクし、データをクラウドに集約することで様々なことができるようになる。年々データ消費量、処理量の増大が進んでいっているが、それを処理するアーキテクチャも進化していくので問題ないと語る。例えば、冷蔵庫の中身を監視し、必要な物を自動的に補充する食材デリバリーや、健康状態をリアルタイムで医師が確認できるようになる遠隔システム、また自動運転による車の移動などが可能になる。全てはビッグデータのアナリティクスにより可能になり、これからはローコストで可能なリアルタイムサービスが主流になると予想する。

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 またソフトバンクはそのような未来に備え、リアルタイムの統一プラットフォーム構想である「Chronos Core」システムを準備している。今年11月からサービス開始予定であり、リアルタイムコンピューティングそのものだと宮内氏は語る。「Chronos Core」によってどういうことが可能になるか。例として携帯電話の課金システムを挙げ、これまで1ヶ月のユーザーの使用料金の計算に5時間かかっていたものが、僅か0.6秒になる。アメリカのスプリントも同じシステムを変え、日米同じシステムで運営する予定だ。またサイバー監視システムにも使え、世界中からのアクセスをリアルタイムに管理・視覚化出来るようになる他、コールセンターのロボットによる24時間自動応答システムも計画しているという。

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 ソフトバンクは今後も、新しいシステムはまず自分の社内で使ってみるというポリシーを続けていく。徹底的に使用し、それが良ければ提供する。リアルタイムコンピューティングもまず自分のグループで使用した後、グローバルに展開していく予定だ。

3章:クラウドの進化
 最後にクラウドサービスについてだ。まだまだ日本では未導入であり、クラウドの利用を促進したいというのが一番の思いだという。高速ネットワークと組み合わせることでより大きな武器になる。導入例としてユニクロが紹介された。ユニクロはスマートデバイスとしてiPod touchを使用し、またモバイル管理システム「Air Watch」の日本での導入第1号だ。スピーディーな在庫管理、その場での他店の展示の確認、社内SNSなどが挙げられた。
 個人ではLINEやFacebookでやっていることを、セキュリティや端末の管理という障壁をクリアしビジネスでもできるようにするのが「Air Watch」の大きな特徴だ。クラウドコンピューティングを上手く導入すれば作業を減らし、クリエイティブな環境を整える、そんな時代を作りたいと語る。

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 ソフトバンクは7月14日には「Chrome Book」を、7月15日にはVmWareとの合弁会社を発表した。 特にVMwareは世界中で50万社が採用しているクラウドサービスであり、同社の提供する「vCloud Hybrid Service」は従来のクラウドの特徴である移行が面倒な点、開発・運用が手間である点、DRが高コストな点を全て解消できるサービスだという。ソフトバンクはいち早く同サービスを導入し、成果を残すことができた。従来は東京にも、大阪にも、といいたように店舗ごとに同じシステムを備えなければならなかったが、クラウドによりその必要もなくなる。是非活用してもらいたいと述べた。

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 最後に、常にテクノロジーは進化していく、ソフトバンクはその先頭に立ち続けないといけない。またテクノロジーの進化を全てキャッチアップし、自身も進化していき、そうすることで社会をプラスにしていきたいと語り、講演を締めくくった。

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 パット・ゲルシンガー氏とレオ・スピーゲル氏の講演については次の記事に続く。

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