ついにKDDIがMVNOに本格参入、「UQ mobile」が本日スタート
2014年12月18日 13時38分更新
12月18日、KDDIの子会社であるKDDIバリューイネイブラーはau LTEネットワークを利用したMVNOサービス「UQ mobile」をスタートさせた。KDDIのネットワークを使用したMVNOとしてはケイ・オプティコムの「mineo」に続いて2例目となる。
「UQ mobile」は人口カバー率99%超を実現しているという800MHz帯域を利用し、最大ダウンロード速度150MbpsのLTE通信に対応する。プランは先述の150Mbpsを月間2GBまで利用できる月額980円の「データ高速プラン」と、受信最大300kbpsで使い放題となる1980円の「データ無制限プラン」の2つを用意。なお「データ高速プラン」で月間2GBを超過した場合は最大200kbpsまで制限され、直近3日間で1GB利用した場合も制限される場合がある。またそれぞれのプランで月額700円を追加することで音声通話にも対応する。詳しくは以下の表の通り。キャンペーンとして、2015年12月31日までは「データ無制限プラン」の最大受信速度は500kbpsに倍速される。
音声通話プランに加入しなくてもSMSとテザリングが無料で使用できるのが特徴だ。その他のオプションとしてはリアルタイム送受信が可能なEメール(xxx@uqmobile.jp)が使用可能となる「メールサービス」が月額200円で、留守番電話サービス/三者通話通話サービス/迷惑電話撃退サービスがパックとなった電話基本パックが月額380円で、端末修理および盗難・紛失時の「端末補償サービス」が月額380円で用意されている。
KDDIの端末で利用できるSIMカード単体での販売のほか、「UQ mobile」からは京セラ製の「KC-01」とLGエレクトロニクス製の「G3 Beat」の2台のAndroidスマートフォンを提供。購入にあたっては「端末購入アシスト」という購入から24ヶ月後までの間、加算料を支払うことで端末購入時の一時的な負担を軽減することが出来るサービスも用意されている。端末については別記事を参照してもらいたい。
・UQ mobile、京セラ製「KC-01」とLG製「LG G3 Beat」の2台のAndroidスマートフォン発売
なおSIMカードは今のところmicroSIMのみの提供となっているため、nanoSIMを使うiPhoneなどでは使用できない点には注意が必要だ。初期費用はSIMパッケージ料金として3,000円、音声通話プランの場合は最低利用期間は12ヶ月となっており、その期間に契約解除する場合は9,500円が解除料としてかかってしまう。
購入はオンラインショップの他、エディオン、ジョーシン、ビックカメラ、ケーズデンキ、ソフマップ、ヤマダ電機。コジマ、ノジマ、ヨドバシカメラといった9社の量販店でも購入できる。
また同日よりKDDIバリューイネイブラーはau 4G LTEを利用したMVNOサービスを軸に、様々なパートナーのモバイルサービス展開を支援する事業を開始する。KDDIバリューイネイブラーはもともとKDDIの回線を利用したMVNOサービスを推進するために設立された会社であり、その事業がいよいよ本格稼働するかたちだ。
具体的にはKDDIバリューイネイブラーが「UQ mobile」のサービス基盤を提供することで、パートナー企業は「UQ mobile」と同等のMVNOサービスを展開できるようになる仕組みとなっている。それによってパートナー企業は料金請求やコールセンター運営、各種法制度対応といった通信事業ノウハウが必要な対応およびコスト負担が不要となり、モバイルサービスの販売と付加価値創造に専念することが可能になるという。もちろん、既存の「mineo」のようにKDDI自身が直接回線を提供することも継続していく模様だ。
ついにKDDIもMVNO事業に本格参戦を果たした。これまでのMVNOサービスはほぼドコモの回線ばかりが利用されてきた状況にあるだけに、業界の拡大という点で大いに歓迎したい。今回提供される800MHz帯のネットワークはKDDIが他キャリアに先駆けて整備してきた回線なだけに、高品質なネットワークも期待できるだろう。「UQ mobile」はWiMAXサービスを提供している「UQ WiMAX」とは別会社という位置付けのようなので、WiMAXとも連携するなどした独自サービスに注目したい。また国内キャリアではKDDIが初提供すると噂されている「Firefox OS」搭載スマートフォンも、おそらくこの「UQ mobile」から出されると思われるので、動向を見守りたいものだ。
懸念としてはMVNOとして提供される回線がLTE回線のみとなっている点だ。KDDIはVoLTEを発表した際に2020年までに3G回線を廃止し、2020年を目処に全て次世代回線へと移行する方針を示している(参考:ついにauでもVoLTEスタート、3Gを捨て「Always 4G LTE」へ)ため、将来を見越してこうした提供の形になっていると思われる。しかし企業がパートナー提携をするにあたって、安価な3G回線を利用できない点はネックとなりかねない。企業側の利用料金は公開されていないため憶測にすぎないが、例えばM2Mサービスを想定する場合には高品質なLTE回線は必要ないため、3Gが使えない分、パートナー企業は余計なコストを支払うことになってしまう。また今回「UQ mobile」は「データ無制限プラン」として300kbpsに抑えたプランも提供しているが、この用途であればやはり安価な3G回線で事足りるはずである。ましてパナソニックやキャノンMJが企業向けMVNOサービスの提供開始を表明しているだけに、この点においてドコモからMVNOにおけるシェアをどこまで奪えるかは怪しくなってくる。
また将来において3G回線を廃止するということは、現在の3G回線を利用した音声通話も利用できなくなるということである。携帯電話事業においてサービスの変化は激しく、VoLTEに対応した安価な端末は来年には続々と登場すると思われるが、6年後の2020年までに古い機種では音声通話が利用できなくなるリスクがあるというのもパートナー企業にとってはネックとなりえるだろう。
MVNO業界の新たな風となるためにも、これらの予想が全て杞憂となるような今後のKDDIの展開に期待していきたい、
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