Sprint再建へ「長く苦しい戦いが始まる」――ソフトバンク 2015年3月期第3四半期決算説明会
2015年2月11日 15時24分更新
2月10日、ソフトバンクは2015年3月期第3四半期の決算説明会を開催した。売上高は前年同期比41%増の6兆4311万6700万円、営業利益は同16.2%減の7880億4500万円となっているが、前年の営業利益にはガンホー、ウィルコムの子会社化による一時益が含まれているため、それを除くと前年同期比16%増の7,880億になるという。
EBITDAも同22%増、純利益も同16%増で、2014年度の連結業績予想である売上高8兆円、EBITDA約2兆円、営業利益9,000億円の数字に向けて順調ににすすめられていると孫氏は話す。
国内の通信事業をみてみると、第3四半期の純増数は147万7000件、ARPUは前年同期比240円減の4250円、解約率は同0.06ポイント増の1.34%となっている。新たな取組としてはNTT東西の光回線卸を利用した固定回線とのセット割引「スマート割引」や「家族の学割25」、また人工知能「Watson」の日本語対応についてIBMとの開発合意を発表した他、子会社の経営統合による経営の効率化が紹介された。
一方ソフトバンクが買収したアメリカのスプリント社の事業は思わしくないようだ。スプリントは第3四半期に21.3億ドル(約2500億円)の減損を計上しているが、ソフトバンクの決算に反映されない点に関しては採用している会計基準が異なっているためだという。減損について「社内でもだいぶ議論した」「経営者としては会計基準がなんであれ減損すべき」「減損したつもりで経営をすべきであると厳粛に受け止めている」などとコメントするなど、孫氏からは重く受け止めている様子が伺えた。
スプリントはCEOにマルセロ・クラウレ氏を迎えて経営改善に取り組んでいるというが、純利益は減損分の14億ドルを差し引いても19億ドルの純損失となっており、まだ険しい状況は続いている。孫氏はスプリントの経営について、当初はアメリカの通信事業で3位のスプリントと4位のT-Mobileを合併させる戦略が大きな柱だったと語り、それが米国の規制当局によって買収は認可されず思惑通りのシナリオにならなかったことが大きいと認めつつも、経営改善に向けて「長く苦しい戦い」であるが「一歩づつではあるが、改善の兆し」にあると話す。
アリババに代表される海外インターネット事業への投資については今後「トランスポーテーションプラットフォーム」「広告 メディア ゲーム」「イーコマース」「アーリー/グロースステージ投資」が重大投資分野になるという。具体的にはインドのスナップディール・コム社、インドネシアのトコペディア社といった地域ナンバーワン企業の筆頭株主になり、ソフトバンクのシナジーグループを発揮していく構えだ。特にインド、東南アジアではスマートフォンの登場によってインターネット改革が訪れている、「海外に植えた種が着実に大きくなってきている」と孫氏はアピールした。
ソフトバンクの決算発表といえばこれまで「ナンバーワン」の言葉に象徴される強気の姿勢が印象的だが、今回は「今日の僕のキーワードは謙虚」と孫氏がコメントするほど控えめな姿勢に終始した。特にスプリントに関しては黒字転換の時期について「時期尚早」と話し、「AQUOS CRYSTAL」のような日米共同端末についても「意味あるものは続けていく」とトーンダウンしたような回答をしている。またシリコンバレーの拠点についてもコスト削減のため縮小していく予定だという。
国内事業についても同様の姿勢だ。ソフトバンクモバイルとワイモバイルの合併によって契約数ではKDDIを抜いて国内事業社2位になることに対しても「ワイモバイルはPHS、データ端末の契約数が多いため、スマホ・携帯電話の台数としては国内3位にあると謙虚に受け止めなければならない」とコメント。光回線卸による新サービスも「始まってみなければ分からない」、第3Qの他キャリアと比べて純増数の伸び悩んでいることに対しては、「みまもりケータイやフォトフレームといった細々なものを売って純増を増やすことに熱心だった時期はあった」と自嘲しつつ、「MVNOで周波数をかしだりたりM2Mで増やすこともできるが、そのようなことはせず、純増の数だけを追うのではなく、しっかり経営の実態をしていくのが重要とみている」と積極攻勢に出る構えはないようだ。
国内事業については「インフラには10年に一度ほど転換期、ドラスティックな時期があると捉えている。その時期ではないのに、無理してテコ入れするのはどうかと考えている」とのコメントに集約されるだろう。一方で「海外ではインドや東南アジアではスマホによって初めて本格的なインターネットの普及した時期であり、ドラスティックな時期を迎えている、そのためソフトバンクはそちらに注力している」と、孫氏の関心はしばらく海外に置かれるようだ。
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