総務省、NTT光回線の卸売サービス提供にあたって消費者保護を要請
2015年2月5日 16時00分更新
総務省は今月から本格的に宣伝が始まったNTT東西による光回線卸売サービスの提供開始にあたって、サービス提供者に対して消費者保護のための取組を要請すると同時に、消費者に対しても注意の呼びかけを行っている。光回線卸売サービスについてはNTTドコモを始め、ソフトバンクBBやプロパイダー、MVNO各社が携帯電話料金と組み合わせた割引サービスを続々と開始させて注目が集まっている反面、光サービスに関する消費者からの苦情・相談件数は高い水準にあり、更に今回のサービス開始に伴い契約変更のトラブルが増加することを想定し、利用者からの苦情・相談が一段と増加することを懸念していることが背景にあるようだ。
まず事業社側に対しては以下の点について十分注意喚起することとして呼びかけている
「・サービスの提供者がNTT東西から変更されること。
・既存のプロバイダー契約の解除申込みが必要な場合にはその旨及び契約解除料が発生する可能性があること。
・サービスの乗換えにより、メールアドレスが変更となる、これまで利用していたオプションサービスが利用できなくなる等の不利益事項が発生する場合にはその旨。
・転用後に、NTT東西のサービスに戻る場合又は更なる別の事業者に乗り換える場合は、卸先事業者との契約を解約し、NTT東西又は当該別の事業者と新規に契約を締結する扱いとなることから、不利益事項が発生し得ること。」
また消費者側に対してもほぼ同様の内容を呼びかけている。
「・サービス提供者がNTT東西から変更になります。
・今のプロバイダに契約解除の申込みが必要なケースがあります。その場合、通常は契約解除料が発生します。
・サービスの乗換えにより、メールアドレスが変更になることがあります。また、テレビサービス(フレッツテレビ)など今まで利用していたオプションサービスが利用できなくなることもあります。
・サービスの乗換えが完了すると、「やっぱりNTTのサービスに戻りたい」「やっぱり(更に)別の事業者のサービスがいい」となったとき、契約解除料が発生したり、電話番号が変わったり、工事が発生したりすることがあります。」
このような呼びかけを行うのには、現在利用しているNTT東西のサービスから光回線卸売サービスに乗り換える際に「転用」と呼ばれる手続きが行われるためであると推測される。光回線卸売サービスの方へ乗り換えるといっても、同じNTTの回線を引き続き使うことになるため「転用」の手続きを行えば電話番号をそのまま引き継げ、ユーザーにとっては利用環境を変えることなく契約形態のみが変えることができるのだ。一見ユーザーにとっても事業者側にとってもサービスを乗り換える障壁が少なく便利なように思われるが、総務省が呼びかけているような事態も想定される。
事業者側、消費者側に呼びかけた内容について上から3つ目までは、基本的に利用環境が変わらないがために想定される事態だろう。
「サービス提供者がNTT東西に変更」に関しては「NTTや今のプロバイダからの電話であるかのような電話勧誘も予想され」るためと悪質な勧誘に対する注意だ。また「プロパイダの契約解除」についてはメールアドレスや契約解除料について、当然踏まえておくべき事柄となっている。「サービス乗り換え~」についても同様だ。
懸念されているのは4点目についてであり、「転用」後は再びNTT東西に戻したり、別の事業社に変更しようとしても再び「転用」することはできず、新規契約になってしまうためだ。携帯電話のMNPについては事業社を乗り換え続けても電話番号を保持し続けられるが、固定回線の場合は今のところそれが不可能となっている。
サービスの選択肢が増え、消費者側にとっても今より安く利用できるなど多くのメリットがあるように見える反面、冒頭にも述べたとおり光サービスに対する苦情・相談件数は他業界に比べて高い水準にある。更にこれまで固定回線事業を行ってこなかった事業社が新規に参入するので、複雑なルール等を踏まえずに販売に乗り出すケースも想定され、一層苦情・相談件数が増してしまう恐れもある。
事業社側に十分な配慮を求めるのは勿論、消費者側も「安いから」「簡単に変更できる」等の理由で安易に乗り換え、不利益を被らないよう注意していきたい。
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