新宿駅ホームで実現 5Gミリ波、列車内も高速安定通信

2025年4月25日 11時00分更新


 KDDIとJR東日本、国内の駅で初めてとなる画期的な実証試験の成功した場所は多くの列車や人が行き交うJR新宿駅のホームだ。ここで5Gのミリ波を用いた通信エリアを安定的に拡大する実証試験を2025年4月11日までに完了させた。この実現に貢献したのが、ミリ波の通信エリアを自律的に最適化し構成する無線中継器、通称ミリ波中継器となる。

 5Gの中でも28GHz帯を活用するミリ波は、広い帯域幅による高速・大容量通信が最大の特長となっている。しかし、電波の直進性が強く、壁や人体などの遮蔽物に弱いという性質を持っている。特に鉄道の駅構内のような複雑な構造や、頻繁に変化する環境下では、電波が届きにくくエリア展開が難しいという課題があった。KDDIは、この課題克服のため、2024年12月にミリ波基地局からの電波を中継し、自律的かつ連続的にエリアを形成する無線中継技術を開発。この技術を搭載したミリ波中継器の有効性は、既に2024年12月に西新宿ビル街でのエリア拡大試験で確認済だ。

 ミリ波中継器の利便性は、その小型・軽量な設計と、光回線の敷設が不要である点にある。これにより、駅のホームのようなスペースが限られる場所への設置も容易となる。今回の実証試験は、JR新宿駅の1番線・2番線ホームおよび周辺施設、合計4箇所にミリ波中継器を設置し、2025年2月10日から4月11日の期間で実施され、評価項目は、対象エリア(1番線・2番線ホーム、列車内)でのミリ波を用いた5G通信の可能性と、通信速度・品質の安定性だ。

 実証の結果、駅のホームにおけるミリ波エリアの拡大が確認された。周辺建物やホーム屋根が遮蔽物となり電波が届きにくい環境でも、ミリ波中継器が自律的にエリアを形成し、通信エリアを広げた。さらに、窓ガラスによる電波減衰の影響を受けやすい列車内の運転席でもミリ波の電波を受信し、駅ホームと同様に1Gbpsを超える通信速度を実現し、通信速度と品質の面でも成果が出た。駅ホームは列車の往来や乗降客の混雑で通信環境が大きく変動するが、ミリ波中継器が常に最適な中継ルートを自律的に選択し、瞬時に切り替える機能により、1Gbpsを超える通信速度を安定して維持できることを実証。これは、基地局または隣接中継器からの信号劣化を検知すると、最適なルートを計算して切り替える技術の成果と言える。

 今回の実証における各社の役割分担は明確。KDDIがミリ波中継技術の開発および実証試験全体の企画・実行・評価を担当。JR東日本は設置環境の検討・提供に加え、実証試験の企画・実行・評価に協力した。今回の成果を踏まえ、KDDIは駅構内や沿線などでの5Gによる高速・大容量通信エリアの拡大に今後も取り組む方針。JR東日本も、この高速・大容量通信環境を生かした新たなサービス展開や、鉄道業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた取り組みを進めていく方針だ。

参照元:https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-564_3849.html

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