DNPの電波反射板、大規模イベントの5G通信改善で有効性を確認
2026年9月24日 10時00分更新

大日本印刷株式会社は2026年9月16日に、電波を狙った方向へ正確に反射させる独自開発の特殊反射板「DNPリフレクトアレイ PASREACH(パスリーチ)」が、株式会社NTTドコモと日本コムシス株式会社が協力するイベント、およびソフトバンク株式会社が協力するイベントの2つの大規模イベントに採用され、実証を通じて5G通信環境の向上に対する有効性を確認したと発表した。多くの人々が一堂に会する大型イベント会場や主要鉄道駅、大型商業施設などでは、来場者の端末が一斉に集中することに伴い通信トラフィックが爆発的に増加し、接続遅延や通信障害といった品質低下が深刻な課題となっている。さらに、高速大容量通信を実現する5G周波数帯の電波は、周波数が高くなるほど直進性が強くなり建造物や人混みなどの遮蔽物に遮られやすいという物理的特性を抱えているため、通信エリアをいかに死角なく効率的に拡張・補完するかが通信インフラ整備における大きな壁となっていた。一方で、電波が届きにくいエリアを解消するために新たな基地局を増設しようとすると、莫大な導入コストや長期の設置工事期間、電源の確保といった現実的な制約が生じる。こうした背景を受け、既存の基地局から届く電波を必要な場所へ的確に誘導するPASREACHが、大規模イベントにおける通信品質改善の切り札として実証現場へ投入された。

今回の実証では、特性の異なる5Gの2つの周波数帯である「Sub6帯」と「ミリ波帯」の双方においてそれぞれ検証が実施された。まず、国内外から多数の来場者が詰めかけた首都圏の大規模イベントにおいては、NTTドコモと日本コムシスが協力する枠組みでSub6帯の実証が行われた。この会場では通信需要の急増に対応するためNTTドコモが臨時の基地局を設置し、これに合わせて日本コムシスと大日本印刷が連携してPASREACHを配置した上で、反射角度や設置位置の最適化を行った。移動基地局車から発射されたSub6帯の電波を湾岸エリアなどの電波対策が必要なエリアへ効率的に反射させた結果、スマートフォンなどの受信レベルや実効通信速度(スループット)の向上が明確に確認され、快適に通信できるエリアの拡張とネットワーク全体の負荷分散が同時に実現した。一方、大規模な屋外イベントにおいて行われたソフトバンクとの実証では、電波の減衰が激しいミリ波帯が対象となった。基地局からの電波が直接届かない遮蔽空間へ向けてミリ波を反射させ、その電波をCPE(構内端末装置)で受信した上で会場Wi-Fiとして来場者へ再配信する構成をとった。その結果、電波が遮られやすかったエリアへ確実に電波を届け、来場者が利用できる通信可能エリアを大幅に拡張できることが実証された。
この製品が高い実用性を発揮する要因は、同社独自の高度な設計技術と優れた導入容易性にある。最大の特長は、電波を増幅する電子回路を持たないパッシブ型の反射板であるため、電源設備が一切不要であり、無線局免許の追加申請も必要としない点だ。これにより、基地局新設のような大規模工事を伴うことなく、極めて短期間かつ低コストで現場へ設置できる。機能面では、電波の入射角度と反射角度を完全に独立して設計できるだけでなく、反射波の広がり方まで緻密に制御できる高度な指向性制御技術を搭載している。利用環境や課題に応じて反射仕様や製品サイズを事前に高精度シミュレーションできるため、導入前に通信品質の改善効果を数値で把握できる点も強みとなっている。対応周波数帯も幅広く、現行のSub6帯やミリ波帯にとどまらず、次世代のBeyond 5Gや6Gで活用が見込まれているFR3帯(7.125〜24.25GHz)への対応も可能だ。さらに、屋内外の多様な環境に設置できる優れた耐久性を備え、周囲の景観や建築デザインに調和する意匠アレンジに対応するほか、追加電力を消費しないため通信設備全体の省エネルギー化と環境負荷低減にも大きく寄与する。
同社は今後、通信事業者や通信工事・施工パートナー各社とのアライアンスをさらに強化し、イベント会場にとどまらず、駅構内、地下街、スマート工場、大型物流倉庫、商業施設、オフィスビルなど多様な不感地対策へ導入を拡大させる計画だ。さらに、設計・シミュレーション技術の一層の高度化と製品ラインアップの拡充を推し進め、周波数の利用効率向上を支える中核インフラとしての展開を目指す。この実証成果は、電源不要の反射板によって5Gの不感地を迅速に解消し、大規模集客施設や次世代通信網における安定した通信環境の確立を力強く後押しするものとなる。
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