Sprintは2年後には大幅改善へ 「自信が蘇った」 ――ソフトバンク決算発表
2015年8月7日 13時36分更新
8月6日、ソフトバンクグループは2015年度第1四半期の決算説明会を開催した。今回の説明会では「世界初」ロボットによる決算説明が行われたが、Sprintの再建について大半の時間が割かれた形となった。
決算についてはPepperが登壇して説明を行った。今回の「世界初」ロボットによる決算説明は孫氏が3、4日前に思いついて急遽決まったものであり、また孫氏以外でソフトバンクの決算発表を行ったのはPepperが初めてであるということから、氏のPepperに対する期待が現れていると思われる。
まず2015年度第1四半期の連結業績だが、売上高は前年同期比10%増の2兆1,390億円、営業利益は同8%増の3,435億円と順調に成長となった。また純利益は投資事業が好調のため同175%増の776億円に、その投資評価益を除いても前年比2倍の数字となっているという。
国内通信事業においては契約数は46万9000件の純減を記録している。これについては質疑応答においてPHS契約数の減少が原因であり、利益的には影響はないと説明。PHSに関しては病院やガスメーターの計測といった部分で使われているものの、現在では音声通話へも定額制が導入されたため音声通話が安いというPHSのアドバンテージも消えつつあり、当面は続けていくがいずれはフェードアウトする時期が来ると認識。今後は純増数ナンバーワンを目指すというよりはスマートフォン、タブレットといった主要回線に注力していくという。
MNPで他社に遅れをとっている点に関しては「契約数が3000万、4000万とある中で月間1万、2万という件数は誤差のうち」と問題にはしていないようだ。
この他ヤフージャパン、アリババを始めとするグループ企業に関しても順調に成長している。
今回の説明会のメインの話題となったのはSprintの再建についてだ。孫氏はSprint買収はYahoo! BBの開始、Vodafoneの買収に次ぐ3度めの「無謀な」挑戦と捉えており、その分SprintとT-Mobile USを合併させて第3極としてVerizonとAT&Tに対抗するという当初のプランを実現できなかったことは自信を失ってしまい、一時はスプリントの売却まで検討したと述懐した。
しかし今、改善に向けて作戦ができ、設計図ができたことで自信は蘇ったという。合併を断念してから経営陣で徹底的に討議、そこから出てきた方針が、かつてVodafone買収してから業績を改善させた日本での成功パターンをSprintでも再現するということだ。
ソフトバンクは如何にVodafoneの業績を改善させたのか。大きく分けて2点あり、OPEX(営業費用)の大幅削減とCAPEX(設備投資)の大幅効率化が挙げられた。売上は急には伸びないとし、ソフトバンクではまず営業費用を下げ、その上で価格競争で顧客を獲得し、更にナンバーワンのネットワークを作るという3段階の改善ステップで改善を図っていったという。
特にネットワークに関しては唯一最大の商品と位置づける。販売する端末ではキャリア間で差別化できず、またネットワークが悪いといくら言葉巧みに販売しても駄目。本質的にはネットワークを最強のものにしなければいけないが、そのためには膨大な設備投資が必要となる。しかし自ら陣頭指揮をとることで、最小限の設備投資で、期間も短縮し、それでも他社を超えるネットワークの設計図ができた話す。
このネットワークのキーワードとして「2.5GHz帯」を挙げる。Sprintは2.5GHz帯で120MHz幅という広い帯域を所有していることから、これを活用した設計となっているという。また設計にあたってはソフトバンクが国内で培ったノウハウが生かされており、その細やかさや積み上げは他社には真似できないものとも孫氏は語った。
また端末の販売方式も変えることで必要な資金を大幅に圧縮するため、SprintではCEOのマルセロ氏が「リース販売方式」を開発。そのための資金を調達するため端末のリースカンパニーを設立中だという。
このように次世代ネットワークのための設備投資を大幅に減らし、販売方式によって大幅に資金を圧縮し、そして営業費用も圧縮する。この3つの費用を圧縮していくことで、負債の返済を行っていく。
孫氏が現在Sprintの見通しに対して抱いている感覚は、かつてYahoo!BBを黒字に持っていった時と同じ感覚であるという。「まだ兆しに過ぎず、世間はなにをいっているんだと言われるかもしれないが、丁度光が見えたところ。嬉しくて堪らない、売る気は全くない」と孫氏は語る。市場の不安が解消されるまでは2年くらいかかるとのことだが、あくまでナンバーワンを目指すという目標ではなく、大幅改善がなされる目安であるという。
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