日本の料金水準は、中位レベル。欧州より高く、米国・韓国より安い水準―ICT総研調べ

2020年7月16日 09時51分更新


 株式会社 ICT総研は7月16日、「2020年 スマートフォン料金と通信品質の海外比較に関する調査」の結果をまとめた。

 日本の携帯電話料金は、諸外国と比べると高い水準であるとの声が聞かれる。一方、昨今の新型コロナウイルスの影響等により顕著になったところであるが、携帯電話を含めた電気通信サービスは、社会の重要なインフラとして、あらためてその役割や通信品質の重要性が見直されている。
 この調査では、通信品質を踏まえて比較した場合でも、日本の携帯電話料金(スマートフォン料金)は高いと言えるのかどうかを把握することを目的とした。
 調査対象は日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国の6カ国のMNOとし、各国のスマートフォン料金は2020年3月1日時点のものとした。また、日本のスマートフォンユーザー向けにWebアンケート調査を2020年3月18日から24日に実施した。

(1) スマートフォン料金の海外比較

■ 日本の利用料金は、中位レベル。欧州より高く、米国・韓国より安い水準。

 2020年3月1日時点のスマートフォン料金を比較したところ、6カ国の平均月額料金(各国シェア上位3事業者の平均)は、データ容量2GBの場合が3,817円、5GB 4,381円、20GB 5,722円となった。最も料金の安い国はフランスであり、データ容量2GB 2,010円、5GB 2,010円、20GB 2,322円。最も料金の高い国は、データ容量2GBがアメリカ 6,188円、5GBと20GBは韓国(6,787円と8,388円)となっている。
 日本はデータ容量2GB 4,021円、5GB 5,121円、20GB 7,135円。欧州より高く、米国・韓国よりも安い水準であり、概ね中位レベルであると言える。
(*スマートフォン料金の海外比較については、対象や条件を絞らず、誰もが契約できる料金プランで比較するため、契約に伴って自動的に適用される割引以外は考慮していない。)

(2) 通信品質の海外比較

■ 日本の4G接続率は、98.5%。調査対象6カ国の中で最も高い。

 通信品質を踏まえて料金を比較するため、「4G接続率」と「料金」をグラフにしたものが表2である。各国の4G接続率(グラフ上では横軸)は、高い順に日本 98.5%、韓国 98.3%、アメリカ 96.1%、イギリス 89.2%、フランス 86.0%、ドイツ 85.8%となっている。日本の4G接続率は、調査対象6カ国の中で最も高い。料金は中位レベルであるのに対し、4G接続率はトップであるため、日本は料金の割に通信品質が高いと言えるだろう。

■ 日本のダウンロード通信速度は、49.3Mbps。調査対象6カ国の中で2番目に速い。

 同様に、「ダウンロード通信速度」と「料金」をグラフにしたものが、表3である。各国のダウンロード通信速度(横軸)は、速い順に韓国 59.0Mbps、日本 49.3Mbps、ドイツ 28.7Mbps、フランス 28.6Mbps、アメリカ 26.7Mbps、イギリス 22.9Mbpsとなる。日本のダウンロード通信速度は、調査対象6カ国の中で2番目に速い。料金が中位レベルなのに対し、通信速度は2位であるため、ここでも、料金の割に通信品質が高いと言える。

(3) 日本のスマートフォンユーザー向けのWebアンケート

■ サービスエリアや通信速度に対するユーザーの満足度が、料金満足度と比べて高いことがWebアンケートの結果から読み取れる。

 日本のスマートフォンユーザー1,000人にWebアンケートにて、「サービスエリア満足度」、「通信速度満足度」、「料金満足度」について、5段階の評価で声を聞いた。
 「サービスエリア満足度」において、「満足している(28.2%)」「どちらか言えば満足している(38.0%)」とポジティブな回答したユーザーは全体の約7割となった。
 「通信速度満足度」においては、「満足している(21.0%)」「どちらか言えば満足している(40.9%)」とポジティブな回答したユーザーは全体の約6割となった。
このことから、日本のユーザーが通信品質に一定の満足をしていることが、アンケート結果から読み取れる。
 「料金満足度」においては、「満足している(14.3%)」、「どちらかと言えば満足している(23.8%)」とポジティブな回答をしたユーザーは全体の約4割となった。
 この点、ユーザーが、上述の(1)(2)の調査結果(日本の料金水準は中位レベル、通信品質は上位レベル)通りの満足度を示していることが、アンケート結果から伺える。

 本調査全体を通じて、世界的に、料金水準と通信品質には一定の相関性があることが認められる。日本の料金水準は諸外国と比べて中位の水準であるものの、4G接続率やダウンロード通信速度等の通信品質を踏まえれば、必ずしも高くないとも考えられそうだ。一方、アンケート結果から、日本のユーザーは、日本の料金水準が中位レベル、通信品質が上位レベルである現状を的確に認識しているとも言えるだろう。
 本年4月の楽天モバイルのMNO新規参入等を通じて、携帯電話事業者間でのより一層の競争が今後期待されるところではあるが、携帯電話が重要な社会インフラとなった現在、料金水準と通信品質の両者からの視点が必要であり、日本の利用者の通信品質に対する要求水準等も踏まえた分析が求められると考えられないだろうか。ICT総研では、利用者にとって議論・判断の指標となる調査を今後とも実施していく方針だ。
 
 
 

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