ZTE、”体験の質”で稼ぐ通信ビジネスを提案

2026年3月10日 09時05分更新


 ZTEコーポレーションは3月9日、スペイン・バルセロナで、モバイルネットワークの収益モデルをトラフィック量からユーザー体験価値へシフトさせるAIを活用した新しいネットワーク制御技術「AIR RAN」と「AIR CORE」の取り組みを発表した。
AIによるユーザープロファイリングと、RANおよびコアネットワーク機能の統合制御を組み合わせることで、収益が伸び悩む通信事業者に向けて、優良顧客への優遇サービスや柔軟な料金プランで新たな稼ぎ方を提案する。

ARPU成長の行き詰まりとZTEの狙い

 これまで通信事業者の収益は「加入者数×ARPU」という構造に支えられてきた。しかし人口ボーナスが頭打ちとなった今、加入者数の拡大だけに頼る成長戦略には明らかな限界がある。ZTEが示すデータによれば、モバイルネットワークにおいて収益の8割超を生み出しているのは全体の2割未満の高価値ユーザーだ。少数のヘビーユーザーをいかに優遇し、つなぎとめるかが、事業者にとって避けて通れない課題になっている。

こうした状況を踏まえ、AIR RANはネットワーク機能を単なる「接続性」ではなく、追加料金を支払うに値する体験型の商品としてパッケージ化する。高価値ユーザーの離脱を防ぎながら、潜在ユーザーの支払い意欲を引き出すことで、収益構造そのものを「トラフィック」から「サービス」へと転換することが狙いだ。

AIプロファイリングによる高価値ユーザーの囲い込み

 ZTEによると、AIR RANはAIを活用したユーザープロファイリング機能を持ち、ロイヤルカスタマーや体験重視のプレミアムユーザーを精度高く抽出する。こうしたユーザーには、時間や場所を選ばず高速通信を優先的に割り当てる「常にファーストクラスの速度」を保証する差別化サービスを提供し、導入から3カ月以内にVIP/VVIPユーザー数を1.5%ポイント押し上げる効果が見込めるとしている。

必要なときだけ速度アップ―チャット感覚で契約できる新サービス

 特定のイベント中や移動中など「この瞬間だけ速くしたい」というニーズに応えるため、AIR RANは主要な利用シナリオ向けに短期・オンデマンド型の速度をブーストするプランも用意する。さらに、自然言語で対話できる「Telco Service Agent」を導入することで、ユーザーはチャット感覚で条件を入力するだけでパーソナライズされたパッケージを即座に契約できる。裏側ではAIR COREと連携し、ネットワーク全体のリソースをリアルタイムで最適に配分する。

ZTEの李暁桐副社長は「AIR RANとAIR COREによる体験中心の運用は、抽象的なネットワーク指標を、ユーザーが実感できる差別化サービスへと変換する。AIエージェントが進化するにつれ、体験を調整する『エクスペリエンス・エージェント』がビジネスモデルの再設計を加速させ、『サービスとしてのネットワーク』という新しい時代を切り拓くことになる」と語る。

商用採用に向けた今後の課題

 通信事業者にとっては、帯域やトラフィック量に依存してきた従来の課金体系に加え、利用シーンや体験レベルに応じた多層的な料金設計が可能になる一方、ユーザーセグメンテーションの精度やAI判断の透明性といった新たな運用課題への対応も求められる。5G-AdvancedやAIトラフィックの増加が見込まれる中、体験起点の差別化とネットワークリソースの効率利用を両立するZTEのアプローチが、商用ネットワークでどこまで広がるかが今後の注目点となる。

出典:ZTE

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