自治体のAI・RPA導入が6割超え―総務省調査
2025年7月1日 09時05分更新
総務省は、地方公共団体におけるAIとRPAの活用促進に向けた最新の導入状況調査結果を公表した。令和6年度(2024年度)末までに全国で1,065団体がAIまたはRPAを導入するという目標が掲げられている中、現状で既に6割以上の団体が導入済みであることが明らかになり、その進捗が着実に加速していることが示された。
この調査は、総務省が毎年実施しているもので、今回は全国の都道府県、指定都市、その他の市区町村を含む全1,788の地方公共団体を対象に、令和6年12月31日時点のAI・RPA導入状況についてアンケート形式で詳細に調査された。特筆すべきは、全ての団体から100%の回答が得られた点であり、地方自治体全体としての取り組み状況を正確に把握する貴重なデータとなっている。
導入状況の概況:全地方公共団体の64.5%がAI・RPAを導入済み
総務省の最新調査結果によると、2024年12月31日時点で、全国の地方公共団体の64.5%にあたる1,154団体がAIまたはRPAを既に導入済みであることが判明した。これを詳細に見ると、AIのみを導入している団体が347団体(19.4%)、RPAのみを導入している団体が91団体(5.1%)、そしてAIとRPAの両方を導入している団体が716団体(40.0%)となっている。実証実験中の団体を含めた場合、まだ導入に至っていない団体は全体の35.5%である。
これは、AI・RPA導入推進の目標である「2024年度末までに1,065団体」を既に上回っており、地方自治体におけるデジタル技術活用の波が確実に広がっていることを示している。

自治体類型別の導入状況:都道府県・指定都市はほぼ完全導入へ
自治体の種類別に見ると、導入の進捗には明らかな傾向が見られる。
・都道府県・指定都市
AI、RPAともに導入が非常に高い水準で進んでいる。AIに関しては、調査時点で都道府県と指定都市の双方が100%の導入率を達成した。 RPAについても同様に、都道府県が96%(45/47団体)、指定都市が100%(20/20団体)と、ほぼ全ての団体が導入済みである。 これは、大規模な自治体ほど先行してデジタル化を進めている実態を示唆している。
・その他の市区町村
全国1,721団体あるその他の市区町村では、AIの導入率は58%(996団体)に達している。実証中(6%、105団体)や導入予定(12%、212団体)の団体を含めると、全体の約76%がAI導入に向けて積極的に取り組んでいる状況だ。 RPAについても、43%(742団体)が導入済みで、実証中(6%、108団体)や導入予定(10%、168団体)の団体を含めると、約59%の団体がRPAの導入に取り組んでいる。 これらのデータは、中小規模の自治体においても、AI・RPAの導入が着実に進展していることを示している。
AIの主な活用分野:「音声認識」「文字認識」が業務効率化を牽引
AIの機能別導入状況を見ると、地方自治体の業務効率化に直結するツール系のAI導入が特に顕著に進展している。
・音声認識
最も多くの自治体で導入されており、令和6年度調査では879件に上る導入件数が確認された。 これは、議事録の作成支援、会議の音声テキスト化、多言語翻訳など、職員の入力作業や情報整理の負担を大幅に軽減する役割を担っていると見られる。
・文字認識
AI-OCR(光学的文字認識)技術を活用したものがこれに続き、622件の導入が報告されている。 住民からの申請書の手書き文字読み取り、調査票やアンケート用紙のデータ化など、大量の紙媒体の情報をデジタルデータに変換する作業の効率化に貢献している。
その他にも、住民からの問い合わせに24時間対応するチャットボット(374件)や、保育所の入所選考における最適化支援などのマッチング機能(113件)の導入も進んでいる。 これらの導入は、住民サービスの質の向上にも寄与している。

総務省は、地方自治体におけるAI・RPAのさらなる活用促進を目指し、導入事例の共有や人材育成支援など、多角的な支援策を展開していく方針であり、今後の進展が期待される。
出典: 総務省「地方自治体におけるAI・RPA活用促進」(令和7年6月30日版)