【ドコモNOC見学会】災害対策とAIによる運用監視の高度化を公開
2026年6月9日 11時59分更新
NTTドコモは6月8日、報道関係者向けにネットワークオペレーションセンター(NOC)の見学会を開催した。災害時にも通信を「つなぎきる」ための災害対策の取り組みと、AI時代を見据えたネットワーク運用監視の高度化について説明し、オペレーションセンターの監視フロアや災害対策機材を公開した。
災害時の中断要因は「停電」と「伝送路断」
ドコモは災害対策の説明で、災害時にサービスが中断する要因は機器そのものの損壊ではなく、主に「停電」と「伝送路断(光ファイバーの断線)」の2つに集約されると指摘した。東日本大震災や能登半島地震でも、被害の規模や地理的特性によって比率は異なるものの、この2要因が支配的だったという。
これに対し同社は、平時の「ネットワークの強靭化」と、災害時の「応急復旧機材の拡充」の両面で対策を進めている。
ネットワークの強靭化では、広域災害・停電時に人口密集地の通信を確保する「大ゾーン基地局」を全国105所に設置(2026年4月時点)。半径約7kmをカバーする災害時専用の基地局で、通常時は電波を停止し、緊急時のみ停波解除して重要通信を救済する。あわせて、多様な災害に備えて停電時も24時間以上運用でき伝送路を二重化した「中ゾーン基地局」を全国2,000局以上に展開。約1,900局でエンジンによる無停電化やバッテリーの長時間化(24時間以上)を実施しているほか、停電時に自動で省エネモードへ切り替えてバッテリーを延命する「基地局スリープ機能」も導入している。伝送路についても、中継伝送路の3ルート化やNTN(非地上系ネットワーク)による2ルート化を進め、伝送路断時の自動切替を実現している。
応急復旧機材は東日本大震災時から大幅拡充
応急復旧機材は、2011年の東日本大震災対応時と比べ大幅に増配備された。移動基地局車は約20台から約120台へ、衛星エントランスは約40台から約600台へ、発動発電機は約500台から約1,500台へ、移動電源車は約70台から約120台へと拡充。さらに可搬型ブースター約130台、ドローン基地局約10台を新たに配備し、手段の多様化を図っている。
会場では、Starlinkとコンパクトな長時間発電機を搭載し連続運用約32時間・狭路アクセスを強化した軽型移動基地局車や、ビル屋上など限られた場所にも手搬入で設営できる5G対応の「ミニコンテナ型基地局」、人の手で運搬・組み立てが可能な可搬型機材などが公開された。樹木や建物でStarlinkの見通しが確保できない場合に、伸縮ポールや無線伝送装置でアンテナを嵩上げして障害物を回避する、現場発のアイデアによる改善策も紹介された。
「競争から協調へ」、JAPANローミングも始動
連携面では、宿泊・給油・輸送・運搬などの目的に応じて社外パートナーとの「つながり」を拡大。能登半島地震の教訓を踏まえ、半島など現地到達が課題となる地域での拠点整備を強化している。通信事業者間でも「競争から協調へ」を掲げ、アセットの共同利用や船上基地局の共用、避難所支援のエリア分担・広報統一などを推進。「つなぐ×かえるプロジェクト」ではモバイルバッテリーメーカーとの連携協定(5月19日発表)により、被災地へ充電環境を無償提供する取り組みを6月から開始した。
2026年4月に提供を開始した「JAPANローミング」は、自社ネットワークが被災した際に他社網経由で通信を確保する仕組みで、4月の岩手県大槌町の山林火災で初めて発動。先週の台風でも事業者間で相互に助け合い、数千人規模の救済につながったという。
NTTの被災予測AIや衛星通信も活用
「もっとできること」として、ドコモはDX/AIによる業務の高度化も挙げた。NTTが開発した「被災予測AI」を導入し、エリアごとの被災リスク度を可視化して基地局のサービス中断の可能性が高い地域・規模を算出。台風22号における八丈島の被災実績で技術検証を終え、2026年6月から実災害での試行運用を開始した。このほか、災害対応マニュアルや過去事例をもとにAIエージェントが「今とるべき行動」を提案する初動支援や、情報収集を自動化するダッシュボードも紹介した。
衛星通信では、GEO(静止軌道)・LEO(低軌道)・HAPS(成層圏プラットフォーム)を組み合わせる「マルチレイヤネットワーク」を構想。2026年4月27日に提供を開始した「docomo Starlink Direct」は、被災地でも空が見えればテキストメッセージや対応アプリで通信できる。さらにレジリエンス強化に向けAmazonの「Amazon Leo」との協業も進めており、完全閉域網や災害時の帯域確保機能などを特徴に挙げた。

AI時代のネットワーク運用監視
後半は、AIを活用したネットワーク運用監視の高度化が説明された。ドコモは「Network for AI(AIワークロードを運ぶネットワーク)」と「AI for Network(AIによる運用の効率化)」の両輪で検討を進めており、膨大かつリアルタイムなネットワークデータと数十年の運用ナレッジをAIが学習し、自己修復・最適化する自律型ネットワークを目指すとした。
その実現に向けたAI活用は3つのステップで整理される。「Step1:AIと人が対話」、「Step2:AIエージェントと人が対話」はすでに商用導入済みで、「Step3:AIエージェントが主体的にネットワークを運用」を将来像に据える。
Step1では、トラヒック分析AI、自動実呼AI、工事影響確認AI、過去ノウハウ検索AI、情報配信AIといった各領域の専門AIと対話しながら障害対応を進め、初動対応に要する時間を60%削減した。Step2では、これらをまとめるマルチAIエージェントが異常検知から被疑箇所推定、措置レコメンドまでを自動実行。無線からコアネットワークまで100万台超の機器データを「ネットワークデジタルツイン」として表現し、グラフアルゴリズムによる被疑箇所推定と生成AIによる措置提案を組み合わせ、専門家へのエスカレーションを要する複雑な障害でリカバリ時間を50%以上短縮した。国際ローミングサービスでも社内業務を自動化する「ゼロタッチオペレーション」を導入し、2026年3月にはシンガポールのStarhub社との実証試験に成功している。
質疑では、利用するAIモデルを特定ベンダーに限定せず随時最適なものを選択していること、最終的な判断・実行には必ず人の確認を入れ、AIは根拠情報を提示する運用としていることが示された。完全自動運用となるStep3には「まだギャップがある」とし、安全な自動制御に向けてガードレールなどの工夫を重ねている段階だと説明した。
オペレーションセンターを公開
見学会の最後には、実際のオペレーションセンターが公開された。大画面には、音声・パケット・SMSのトラヒックを監視する「ネットワーク全体監視ナビ」、ダウンディテクターやX(旧Twitter)の書き込みを監視するSNS監視画面、基地局のダウン局・停電局を地図上に表示する画面、Step2のAIエージェントによるAIドリブンな監視画面などが並ぶ。

担当者によれば、東日本エリアだけで1日あたり300万〜400万件規模のアラームが発生し、現地措置が必要となるのは約400件ほど。基地局の故障の7〜8割は自動措置で対応し、自動措置できないものに人が介在する。近年はアラームベースの監視から、トラヒックの落ち込みを捉えてサイレント障害にも気づける可視化へと運用を進化させているという。ドコモは「お客さまから選ばれ続けるネットワークへ」、AI・データ活用をさらに深化させる方針を示した。
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