【SoftBank World 2014】アートとテクノロジーが産み出す未来の広告――基調講演「2000年越しの課題解決 ~Yahoo! JAPANのアート&テクノロジー~」
2014年7月24日 10時00分更新
前回の記事から引き続き、「SoftBank World 2014」にて行われた基調講演をみていきたい。
2000年越しの課題解決
~Yahoo! JAPANのアート&テクノロジー~
ヤフー株式会社
代表取締役社長
宮坂学氏
宮坂氏はまず世界で最も古い広告として、トルコの遺跡に残っている2000年前の絵を見せ、次におよそ250年前の日本で最初の広告と言われる三越の絵を見せた。古くから広告は続いているが、どうやって自分たちのサービスを客に伝えるか。この課題は2000年にわたって解決されていないと指摘する。実際の店舗に来てもらうのが20世紀までの課題であったが、インターネットが発達した現在は、ウェブサイト、アプリ等々も含め、どうやって知ってもらうかは難しい問題だと話す。
この課題解決のために2つの方向性があると宮坂氏は述べる。1つ目はアートであり、印象に残すためにどのような表現を用いるのかという点。2つ目はテクノロジーであり、これは広告を出すタイミングに関わるという。最高の表現を最高のタイミングで出すためにはどうすればいいのだろうか。
アートの方からみていこう。インターネットのアート史として、テキスト、写真、映像と技術の進化とともに表現が多様になってきている。今や広告も映像化が進んでいるきており、また5人に1人が毎日ネットで映像を視聴している時代である。このような時代だからこそ映像広告はユーザーに受け入れられる素地はできてきており、テレビCMでは平均15秒しか使えないが、インターネットでは平均58秒の長さを使えることに触れ、宮坂氏はこの点は企業にとって大きなチャンスではないか、と指摘する。
「未来のアート」として3Dプリンターについて述べた。テクノロジーの進化によって表現の方法は変わってきたが、テキスト、写真、映像、これらはディスプレイの中のものであった。しかし3D、プリンターはディスプレイの外の広告として果たせるのではないだろうか。ヤフージャパンは「さわれる検索」という慈善事業に取り組んでいる。盲学校に3Dプリンターを寄付し、3Dプリンターと音声検索を組み合わせることで検索結果を立体物として出力し、「さわれる」ことを必要とする目の悪い子供達のための事業である。今は慈善事業という形で行なっているが、3Dプリンターが各家庭に普及すれば、家や車など平面ではなく立体の広告を家にいながら手に取れるようになる、と宮坂氏は述べる。
次にタイミングについてだ。ユーザーにとってノイズにならないように、興味のある人のみに届けるようにするにはどのような方法があるのだろうか。
広告のターゲティングの歴史としては、従来はコンテンツによってセグメント分けして提供していたが、これからはユーザーの行動履歴からターゲティングができるようになるという。鍵は「ビッグデータ」の活用にあり、人にあった広告を出せるようになる。
ビッグデータには次の3つのポイントがある。Volum、Velocity、Varietyだ。Volumについてはページビューについてで、国民の2人に1人が毎日ヤフーを閲覧している数字がある。Velocityについては秒単位で履歴が更新される点で、最新のデータを用いてターゲティングすることが可能になる。Varietyはヤフーが提供するメールやショッピングなどの多様なサービスだ。ユーザーのアプリごとの利用データを分析し、ユーザーからのシグナルを捉えられるようになるという。
こうしてユーザーの意思決定のシグナルが得ることで、ユーザーの気持ちが分かるようになることが、「マルチビッグデータ」の時代により果たせるようになると宮坂氏は述べる。ヤフーへアクセスする570億回のクリック、タップはつまり意思決定の積み重ね、シグナルであり、これを組み合わせることでユーザーの行動予測を分析し、ユーザーごとにピンポイントでぴったりな広告を出せるようになるという。テクノロジーの進化により、タイミングという要素が広告に加わったのだ。
またどのくらいの反応速度で広告が出せるようになるのか、宮坂氏は0.2秒で広告が出せるようになると述べる。この速度で広告が出せるようになれば、行き着く先は広告が会話になっていくのではと話す。
ヤフーの課題として、最先端技術を誰もが使えるように、特別な人だけでなく別け隔てなく平等に使えるようにしたいという思いがある宮坂氏は語る。
最先端の広告テクノロジーを使いこなしている店はどんどん増えてきており、小さな店でもネット広告を駆使することで売り上げは伸ばすことができる。宮坂氏はこれを広告の民主化と呼ぶ。インターネットのテクノロジー、ビッグデータの活用によってターゲティングが出来るため、無駄な広告を出すことなくピンポイントに出せることで、小さな店舗でもグローバルに展開することができるようになると話す。
ヤフーはインターネット広告を推進していき、ビッグデータを企業の大小に関わらず、誰もが使えるようにしていきたいと述べて講演を締めくくった。
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