ワイモバイル新料金「シンプル3」発表 海外2GB無料で月額858円から
2025年9月8日 09時00分更新

ソフトバンクは2025年9月4日、サブブランドである“ワイモバイル”の新たな料金プランとして、「シンプル3 S」「シンプル3 M」「シンプル3 L」(以下「シンプル3」)の提供を、2025年9月25日に開始すると発表した。携帯電話会社のサブブランド間での競争が激化する中、今回の新プランは、ソフトバンクが実施した1,000人規模の消費者アンケートで明らかになったユーザーの三大ニーズ、すなわち「データ容量」「経済圏のメリット」「海外データ通信」の拡充に正面から応える戦略的な内容となっている。これは、単なる料金改定に留まらず、ソフトバンクグループが持つ決済サービス「PayPay」や固定通信サービスとの連携をこれまで以上に強化し、ユーザーのライフスタイルに深く根差した価値を提供しようとするワイモバイルの明確な意思表示のようだ。
新プラン「シンプル3」の最も注目すべき点の一つは、徹底的に強化された割引構造による価格競争力だ。データ容量は、Sプランが従来の4GBから5GBへ増量され、Mプランが30GB、Lプランが35GBという3段階のシンプルな構成は維持される。基本料は「シンプル2」から変更されるものの、各種割引額の大幅な増額により、条件を満たした際の支払額は従来よりも割安になる設計だ。特に強化されたのが、ソフトバンク経済圏の中核をなす「PayPayカード割」だ。
月額料金の支払いに「PayPayカード」を利用した場合の割引額は、従来の187円(税込)から330円(税込)へと増額。さらに、年会費1万1,000円(税込)の「PayPayカード ゴールド」会員向けには、月々550円(税込)という強力な割引が新設された。これは、PayPay経済圏へのロイヤリティが高いユーザーを明確に優遇する施策と言える。加えて、自宅のインターネット回線などとのセット契約で適用される
「おうち割 光セット(A)」も、これまでSプランのみ割引額が少なかったが、「シンプル3」ではM/Lプランと同額の1,650円(税込)割引に統一された。これにより、全ての条件を適用した場合、「シンプル3 S」(5GB、基本料3,058円)の月額料金は、わずか858円(税込)となる。これは、旧プラン「シンプル2 S」の最安料金1,078円(税込)を大きく下回る設定であり、ライトユーザー層に対する強力なアピールとなるだろう。

二つ目の大きな目玉は、海外データ通信の大幅な拡充だ。2026年夏以降の対応予定となるが、「シンプル3」の契約者は、約200の国・地域で、各プランの国内データ容量とは別に、毎月2GBまでのデータ通信を追加料金不要で利用できるようになる。これは、競合のahamoなどが提供する海外利用サービスを強く意識したものであり、海外旅行や出張の際にユーザーが感じていた高額なローミング料金や、Wi-Fiルーターのレンタル・返却、現地SIMの購入・設定といった手間とストレスから解放する画期的なサービスだ。なお、このサービスが開始されるまでの期間についても代替措置が用意されており、「海外あんしん定額」の24時間プラン(3GB、980円)を月に最大7日分、追加料金なしで利用できる。これは実質的に月々最大6,860円相当の価値があり、本格提供開始までのつなぎとしても非常に手厚い内容となっている。ただし、SIMのみを新規契約した場合は、契約月から4ヶ月間は海外データ通信が利用できないという注意点もあるため、契約を検討するユーザーは留意が必要だ。
三つ目の柱は、PayPay経済圏との連携をさらに深化させる取り組みの数々だ。まず、「シンプル3」契約者は、LINEのスタンプが使い放題になったり、Yahoo!ショッピングでのポイント付与率がアップしたりする特典パッケージ「LYPプレミアム」を追加料金なしで利用できる。これは、通信サービスに加えて日常生活でのエンターテイメントやショッピングにおける付加価値を提供するものだ。さらに、2025年11月以降には、「PayPay使ってギガ増量キャンペーン」というユニークなプログラムが開始される予定だ。これは、1回200円以上のPayPay決済(クレジット、残高、ポイント)を月に10回以上行うと、その決済回数に応じて、翌月のデータ容量がプレゼントされるという仕組みである。例えば、月に30回以上PayPayで決済した場合、「シンプル3 M/L」のユーザーには10GB、「シンプル3 S」のユーザーには10GBものデータ容量が付与される。日常の買い物という行為が、スマートフォンのデータ容量、いわゆる「ギガ」に直接還元されるこの仕組みは、「ポイ活」ならぬ「ギガ活」とも呼べる新しいユーザー体験を創出し、PayPayの利用促進とワイモバイルへの顧客エンゲージメント向上を同時に狙う巧みな戦略と言えるだろう。
このほかにも、「シンプル3 L」では10分以内の国内通話が無料で利用できる特典が付帯したり、新たに「おうち割 でんきセット(E)」や法人向けの「法人契約割引3」が提供開始されたりと、細部にわたるサービス拡充が行われる。今回の「シンプル3」の発表は、ワイモバイルが単なる安さを追求するブランドから、ソフトバンクグループの強力なアセットを最大限に活用し、ユーザーの多様なライフスタイルに寄り添い、包括的な価値を提供する「スマートな選択肢」へと進化しようとする明確な姿勢の表れだ。データ容量、料金、海外利用、そして経済圏連携という、現代のスマートフォンユーザーが求める核心的な価値を網羅したこの新プランは、サブブランド市場の競争環境に大きな一石を投じることになりそうだ。
参照URL:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2025/20250904_01/





