イッツコムら、Wi-Fi HaLowとAIカメラでクマ出没を検知しTV通知する実証へ

2026年8月25日 10時00分更新


 イッツ・コミュニケーションズは8月21日、富山県南砺市においてWi-Fi HaLow(850MHz帯)とAIカメラを活用したクマ出没の遠隔検知およびテレビへの情報伝達に関する実証事業を実施すると発表した。AIカメラでクマを24時間体制で自動検知し、検知情報を住民宅のテレビにプッシュ通知することで周知時間の短縮を目指すのが特徴で、総務省の「令和8年度 地域社会DX推進パッケージ事業」に採択された。

南砺市では農地の藪化などによりクマが市街地へ移動しやすい環境になっており、2025年には目撃・痕跡情報が176件に急増、人身被害も2件発生したという。従来はクマ出没時の対応が住民からの通報に依存しており、広報車が現地に駆けつけて周知するまで約30分を要していたと説明する。加えて山間部ではLTE回線が不安定な地域があるほか、二重サッシなどの影響で防災行政無線の音声が宅内で聞き取りにくい世帯も点在していたとしている。

LTE不安定地域でも低コストで長距離伝送、自治体から直接テレビへ通知。官民5者体制で一連の流れを実証

実証は南砺市内のクマ出没警戒エリア(山本・小山地区、志観寺地区)で実施する。サーマルカメラと連動するPTZカメラおよびAIボックスで構成するAIカメラを複数台設置し、クマの出没を自動検知する仕組みを構築するという。検知範囲の目安は約100m先まで(夜間も対応)で、検知した映像はWi-Fi HaLow(850MHz帯)を使役所側の基地局まで無線伝送する。LTE回線が不安定な地域でも通信費をかけずに、約1.5km以上の長距離伝送が可能になるとしている。カメラによる検知範囲と、映像を伝送する無線の到達距離は別の指標である点に留意が必要だ。

総務省「地域社会DX推進パッケージ事業 令和8年度 実証事業1次公募採択案件」資料より

市職員が庁舎などから検知情報を遠隔確認した後、遠隔操作で対象地域の住民宅のテレビにクマ出没情報をプッシュ通知する「テレビ・プッシュ」の仕組みも導入する。住民宅のテレビを自動で起動して通知を表示するため、電源が入っていない状態でも情報を届けられるという。検知から周知までの時間を約5分に短縮することを目指すとし、高齢者を含め多くの住民が使い慣れたテレビを活用することで、高い情報伝達力が期待できるとしている。

テレビを持たない世帯や外出中の住民への対応も想定し、「なんと!緊急メール」や南砺市防災アプリ、スピーカー付き広報車や屋外スピーカーによる防災行政無線など既存の連絡網も併用し、多角的な周知を図る計画としている。

実施体制には、南砺市のほか一般社団法人日本ケーブルラボ、となみ衛星通信テレビ、DXアンテナ、Cueformが参画する。イッツコムがプロジェクト全体を管理し、日本ケーブルラボがシステム企画や無線関連調整を担うなど、複数の事業者が役割を分担する体制という。

この事業は、総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業」のうち、「先進的通信システム活用タイプ」の令和8年度1次公募採択案件にあたる。イッツコムは今回の実証を通じてシステムの有用性や運用フローを検証し、2028年度以降の自治体などでの本格導入を目指すとしている。

鳥獣被害対策と通信インフラの組み合わせは、中山間地域を抱える自治体に共通する課題であり、Wi-Fi HaLowのような低コストで長距離伝送が可能な無線技術の活用事例は、他の自治体の対策検討にも参考になりそうだ。

出典:イッツコム 2026/08/21リリース
参照:総務省 地域社会DX推進パッケージ事業

関連カテゴリー