ソフトバンクとシスコ、全国で次世代「All optical network」展開
2025年10月29日 10時30分更新

ソフトバンク株式会社は、シスコシステムズ合同会社と連携し、通信ネットワークの大幅な省電力化を実現する「All optical network(オール・オプティカル・ネットワーク)」を全国のメトロネットワークへ展開することを発表した。光電変換を行わずに光信号のままデータを伝送する技術を採用することで、従来と比較して約90%の消費電力削減を実現するという。第1弾として2025年9月に大阪府エリアでの展開が完了しており、今後2027年までに全国のメトロネットワークへの展開を完了する予定だ。
この新たなネットワークでは、通信の全領域に光技術を導入し、400GbE(ギガビット・イーサネット)に対応したシスコの最新ルーターを採用。さらにメトロネットワーク向けに最適化された簡易型アーキテクチャーを構築することで、大容量・高効率・低消費電力を同時に実現している。ソフトバンクとシスコは、AIの普及やBeyond 5G/6G時代におけるデータトラフィックの増加を見据え、拡張性と持続可能性を両立した通信インフラの整備を進める方針だ。

背景には、近年急速に進む生成AIやクラウドサービスの普及による通信トラフィックの増大がある。Beyond 5G/6Gの時代にはさらに大容量化が進むと予測されており、通信事業者には環境負荷を抑えながら高性能なネットワークを提供する責任が求められている。ソフトバンクはすでに2023年に全国のコアネットワークでAll optical networkの展開を完了しており、今回はその対象をメトロネットワークまで拡大。これにより、基地局やAIサービスなどの拠点とコアネットワークを結ぶ区間全体で、光技術を活用したフェーズフリーなネットワークを実現する。
今回の展開では、IPルーターにシスコの400Gコヒーレント型光トランシーバー「OpenZR+」を搭載し、途中での光電変換を一切行わない構成を採用した。この技術により、帯域当たりの電力消費を約90%削減するとともに、SRv6(Segment Routing IPv6)などのIP技術を組み合わせることで、コアからエッジまでの柔軟で高度な経路制御を実現する。さらに、長距離伝送を前提としないメトロネットワークにおいては、シスコが新開発した小型光増幅モジュール「QSFP-DD OLS」を導入。ソフトバンク独自の外部電力不要型光多重装置と組み合わせることで、従来比で90%超の電力削減を達成した。

また、シスコの最新チップ「Silicon One Q200」を搭載したルーターを採用し、従来比約7倍のスイッチ容量を実現しながら、消費電力を半減。これにより、省エネ性と高性能を兼ね備えた次世代ネットワークを構築している。ソフトバンク テクノロジーユニット統括の大矢晃之氏は、「AIの普及や次世代技術の進展に伴うデータ需要の増加に対応し、省エネと柔軟性を両立した通信基盤を構築することで、日本社会と産業を支える強靭なネットワークへ進化させる」とコメントした。一方、シスコシステムズ合同会社のアジア太平洋地域日本サービスプロバイダー事業プレジデントであるヴィッシュ・アイヤー氏は、「今回の取り組みは、強靭でエネルギー効率の高いインフラを構築する上で重要な一歩だ。両社の協力により、AIによる成長と日本のデジタルトランスフォーメーションを支える持続可能な通信環境の実現を目指す」と述べている。
ソフトバンクとシスコは今後も協力を継続し、AI・クラウド・IoT時代にふさわしい環境性能と拡張性を備えたネットワークの実現を推進する構えだ。All optical networkは、通信の省電力化と高効率化を両立させる次世代インフラとして、日本のカーボンニュートラル目標やデジタル社会の基盤整備を支える重要な技術になると期待されている。
参考URL:https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2025/20251023_01/




