KDDI総合研究所、8Kマルチアングル映像に対応したリアルタイムエンコーダを開発
2017年6月19日 14時20分更新
KDDI総合研究所は、マルチアングル映像に対応した8Kリアルタイムエンコーダを開発した。同技術により、将来的にスタジアムでの競技映像をもとに家庭やモバイル環境でのフリーナビゲーション視聴が可能となるほか、モバイル環境では、次世代のモバイル通信方式である5Gのサービス展開に合わせ、スタジアムでの新しい体験価値を提供するツールとして普及促進が期待される。
4K/8K放送の本格的な普及を目指した4K/8K試験放送が高度広帯域BSにて2016年8月から開始され、2020年に向けて競技シーンを高精細かつあらゆる視点で楽しめる新しい映像体験、いわゆるマルチアングル映像体験やフリーナビゲーション映像体験への期待が高まっている。
マルチアングル映像とは、例えばサッカーの競技会場に置かれた複数のカメラで撮影された映像をまとめて配信し、ユーザがカメラ選択を行ってディレクター感覚で自分の好きなアングルの映像体験ができるものである。
また、フリーナビゲーション映像とは、競技会場で走り回るサッカー選手や審判、ボールなどの追跡情報をマルチアングル映像に加えて配信することで、ユーザが見たいアングルや被写体を任意に選択し、ゲームプレイヤ感覚で映像体験ができるものである。
これらは、複数の4K/8K映像配信を低コストで実現するために圧縮効率の大幅な改善が求められている。
これに関連して、KDDI総合研究所では2014年10月に、H.265|HEVCマルチビュー拡張方式に準拠した4Kリアルタイムエンコーダを開発したが、当初は30fpsの4K映像を対象としていた。同エンコーダは、8Kマルチアングルともなると、1アングル当たりのデータ量が4Kに比べて単純に4倍になるだけではなく、60pや120pの高フレームレートへの対応を見据えた符号化性能の改善が不可欠であり、8K解像度となることで画面ごとの処理負荷の差異が増大する方向であり画面単位の均等なタスク分割では膨大なCPUリソースを要するという、8Kリアルタイムエンコーダに特有の技術課題が残されていた。
しかし、今回、KDDI総合研究所はエンコーダ制御最適化技術と処理速度改善技術を導入したことにより、H.265|HEVCマルチビュー拡張方式に準拠した8Kリアルタイムエンコーダの開発に成功したという。
符号化性能については、実験で扱った8Kスタジアム映像(実際にサッカーの試合を4台の8Kカメラで撮影)の特徴を分析し、選手領域の分布を考慮したブロック分割と予測方式選択を導入することで視聴品質を損ねることなく、4台の8Kカメラによる60fpsのマルチアングル映像を160Mbpsに圧縮。比較として、8K映像を伝送する現行技術では4台で320Mbpsの帯域を必要としていたため、1/2の圧縮率(2倍の圧縮性能)に相当するという。
また、CPUごとの符号化タスクの割当てを、画面間の動き量を基準に動的に行うメカニズムを新たに導入した結果、単純な並列処理に比べて所要のCPUリソースを1/4に低減することに成功したとのこと。
今後は2018年度中の実用化を目指すとともに、120fpsの高フレームレートへの対応や更なる圧縮効率の向上も進めていくとしている。
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