OpenAI、安全最優先 非営利が握るAIの未来
2025年5月7日 10時30分更新
対話型AIサービス「チャットGPT」を開発した米オープンAIは5日、組織構造に関する重要な発表として営利企業への転換を断念するとした。営利企業化により生成AI開発に必要な資金を投資家から集めやすくする狙いから検討されていた動きだったが、安全対策が後回しになる懸念が関係者から指摘されていた背景がある。この懸念に対し、OpenAIは非営利組織が営利子会社を監督する現行体制を今後も継続すると表明。非営利組織の判断の下、自社の利益よりも公益を重視したAI開発が可能になるという方針だ。
OpenAIのミッション「汎用人工知能(AGI)が全人類に恩恵をもたらすことを保証する」は、この決定によって一層その重要性が強調される。創業以来、非営利団体が開発の方向性を主導してきた経緯があり、その理念を維持する形となった。営利子会社はAGI開発に必要な巨額の資金を獲得する役割を担うが、その活動は非営利組織の監督下で行われ、これにより、資金調達の必要性と、AGIの安全性や公共性といったミッションの追求とのバランスを図る狙いだ。

CEOのサム・アルトマン氏も、OpenAIが「普通の会社ではない」と繰り返し述べており、AGIが人類にとって最も強力なツールとなる可能性を指摘し、それを一部の手に留めず、すべての人々を直接エンパワーする「民主的なAI」の道を目指す姿勢を明確にしている。このビジョンを実現し、高性能なAIツールを広く提供するためには、現在必要とされる数百億ドル、将来的には数兆ドル規模にもなりうる莫大なコンピューティングリソースへの投資が不可欠。営利子会社はこの資金を確保する役割を担うが、その開発・展開は非営利組織の公益を重視する判断基準の下で行われることとなる。
非営利組織が営利部門を監督するこの体制は、安全性とアライメント(AIの振る舞いを人間の意図に沿わせること)を最優先するための重要な枠組みとなっており、関係者から指摘された安全対策への懸念に対し、営利目的のみに傾倒しない構造を維持することで応える形だ。これは、迅速な開発と安全性の両立を目指すOpenAIのアプローチを示すものと言えるだろう。
また、この構造は、非営利組織が営利子会社の成長から得られるリソースを活用し、AGIの恩恵を多様なコミュニティに還元するためのプログラムを強化することを可能にする。教育、医療、公共サービスといった分野でAIを活用し、社会全体の利益に貢献する活動への投資が期待される。営利企業への全面転換を断念し、非営利組織による監督体制を維持する今回の発表は、AGI開発における倫理と安全性を重視するOpenAIの強い意志の表れであり、技術進化が公益に資する未来を目指すための選択となる。