株式会社 ICT総研は6月2日、2017年 MVNO格安SIMの市場動向調査の結果をまとめた。総務省主導によるSIMロック解除の流れを受けて参入事業者数が668社に上るなど、普及初期から普及拡大期に移っているMVNO格安SIMについて、市場実態や利用動向の把握を目指している。
10,703人に対するWebアンケートのうち、格安SIM利用者1,024人の回答結果を元にした利用者シェアや顧客満足度の実態把握に加え、「格安SIM」契約数の市場規模についても推計されている。
MVNO「格安SIM」利用者シェア、トップは楽天モバイル
スマートフォンに格安SIMを挿して利用しているユーザーの回答を集計した結果、楽天モバイルが20.9%となり、出現率ベースで利用者数シェアトップとなった。NTTコミュニケーションズの「OCNモバイルONE」が13.1%、ケイ・オプティコム(関西電力子会社)の「mineo」(マイネオ)が12.8%、インターネットイニシアティブの「IIJmio」が11.2%、UQコミュニケーションズの「UQモバイル」が7.6%でこれに続いた。この上位5社で合計65.6%と、全体の約2/3を占めている。OCNやIIJ、BIGLOBEなど、もともとネットワーク運営に強みを持つISP事業者が1年前と比べてややシェアを落とし、楽天、mineo、UQモバイルなど後発の事業者が、積極的なプロモーション戦略などを背景にシェアを伸ばした構図となっている。
「最適な料金プランの有無」「コストパフォーマンス」に対する平均満足度が他より高い
スマートフォンでの格安SIM利用者に対して、10項目におよぶ満足度調査を行い、満足度ポイントを100点満点換算したところ、「コストパフォーマンスの高さ」(平均78.1ポイント)、「最適な料金プランの有無」(平均76.4ポイント)など、料金面に対する項目の満足度ポイントが、他の項目と比べて相対的に高い数値となった。この傾向は1年前と同様であり、2項目とも今回はmineoがトップとなった。また、「LINEモバイル」のコストパフォーマンスの高さに対する満足度ポイントが著しく高いという結果も出ているという。
データ通信の速度はUQモバイルが満足度トップ、事業者に対する信頼性はIIJmio
一方で、「データ通信の品質・安定性」、「データ通信の速度」、「コールセンターのつながりやすさ」など、MVNO事業者にとって弱点とされている部分については、平均値が1年前より悪化している。そんな中で、「データ通信の品質・安定性」はBIGLOBE SIMが、「データ通信の速度」についてはUQモバイルが、「コールセンターのつながりやすさ」ではmineoが満足度トップとなった。この3項目については、3社とも2年連続トップである。特にUQモバイルのデータ通信速度の満足度ポイントは、突出して高い。
また、「契約手続きのしやすさ」および「開通までの待機時間の長さ」では、プラスワン・マーケティングの「FREETEL SIM」がトップ、「初期設定のしやすさ」はIIJmioがトップとなった。契約・設定関連のこの3項目は、料金面ほどではないが平均満足度が高い。
「事業者に対する信頼性」は、IIJmioが75.0ポイントでトップ。2年連続のトップであり、UQモバイルがこれに続いた。この項目は、満足度ポイントが高い事業者と低い事業者が大きく分かれる形となった。
MVNO「格安SIM」契約数、2017年末に990万契約まで拡大すると推計
総務省によると、MVNOサービスの契約数は、2015年末の1,163万契約に対し、2016年末は1,485万契約と、1年間で28%の伸びを記録した(MNOであるMVNOを除いたもの)。一部のMVNO事業者がサービス終了を発表するなど、事業者数の増加には一服感もあるものの、MVNOサービスの市場は、まだまだ普及拡大期にあることから、ICT総研では、2017年末にはこれが16.2%増の1,725万契約まで拡大すると推計している。また、そのうち「格安SIM」(SIMカード型)の契約数は2016年末時点で819万契約と見られるが、これも2017年末には20.9%増の990万契約まで拡大すると見込んでいる。
モバイル契約数全体に占めるMVNO契約の比率は9%程度と1年前と比べると約2%増加した。総務省は、モバイル契約数全体の10%程度をMVNO契約の比率にしたい意向を以前より示しているが、仮にMVNOサービス全体という定義で見るのであれば、この水準は達成間近と見ることもできる。SIMフリースマートフォン端末ラインナップの増加やMNOに対抗して音声定額プランを充実させてきている点などが、格安SIM契約者の増加に寄与している様子。
ICT総研では、今後のMVNOサービスの市場について、「コンシューマ向けでは女性やシニア比率の向上、法人向けにはIoTやM2M向けのSIM提供の拡大などがカギになってくる」と分析しており、競争がますます激化するこの市場を引き続き定点観測していく方針だ。
関連リンク:2017年 MVNO格安SIMの市場動向調査(ICT総研)