モバイルキャッシュレス決済、モバイル電子マネー・QRコード決済額は2020年度 2.9兆円に急成長―ICT総研調べ

2019年7月1日 11時37分更新


 ICT総研は、モバイルキャッシュレス決済の市場動向に関する調査結果をまとめた。同調査は、決済サービス運営会社・関連企業への取材結果に加え、インターネットユーザー約4,000人へのwebアンケート調査、各種公開資料などをまとめ、分析したものとなっている。アンケート実施時期は2019年6月11日から6月17日。
 なお、同調査の「QRコード決済」にはバーコード決済のサービスも含まれる。また、見出しに記載されている「モバイル電子マネー」と本文内の「スマホアプリの電子マネー」、「モバイルQRコード決済」と「スマホのQRコード決済」は同義となっている。
 
 

モバイル電子マネー・QRコード決済額は2020年度 2.9兆円に急成長

 2018年の家計最終消費支出は約292兆円であったが、このうちクレジットカードや電子マネー等のキャッシュレス決済は70兆円規模に達しており、キャッシュレス決済比率は24%程度と推定される。
 ICT総研は、今後成長が見込まれるスマホ等を利用したモバイルキャッシュレス決済の分野に着目し、その市場規模を予測した結果、2018年度の「モバイルアプリのキャッシュレス決済額」は約1.1兆円と推計している。2019年度はQRコード決済の普及や、消費税増税に伴い国が10月から翌年6月まで実施する「キャッシュレス・消費者還元事業」の影響で1.8兆円に成長、2020年度には2.9兆円に急拡大すると予測している。
 
表1.2019年度キャッシュレス決済市場動向調査
 
 電子マネー決済額はカード・タイプの決済を含めると2018年に約6兆円市場に成長している。スマホ等のモバイル電子マネーはこのうちの0.9兆円だが、2019年度に1.1兆円、2020年度に1.4兆円へと拡大する見通しであり、QRコードによる決済額は、2019年度に0.7兆円、2020年度には1.5兆円へと急拡大するとしている。
 
 

小額決済時のモバイル電子マネー利用率は10.5%、QRコード決済利用率は9.4%

 ICT総研が2019年6月に実施したアンケート調査では、4,302人のアンケート対象者のうち1千円〜3千円の小額決済の場合、71.6%の人が現金を利用すると回答した。クレジットカードを利用すると回答した人は43.8%、カード型の電子マネーを利用すると回答した人は18.7%だった。スマホアプリの電子マネー利用者は10.5%、スマホのQRコード決済利用者は9.4%になった。
 1万円〜3万円の比較的高額な買い物をする場合は、現金の利用率は43.8%に下がり、クレジットカードの利用者が68.0%へと上昇する。スマホアプリの電子マネー利用者は4.6%、スマホのQRコード決済利用者も4.6%となる。高額な買い物をする場合は、クレジットカードを利用する人が増え、モバイルキャッシュレス決済を利用する人が減少する傾向が見られた。この点について、ICT総研は「高額決済をする場合に従来型のサービスであるクレジットカードの信頼性が高く、新サービスであるスマホのキャッシュレス決済は発展途上と言える」としている。
 同社が2019年1月に実施した同様の調査と比べると、現金・クレジットカードの利用率に大きな差はないが、電子マネーとQRコード決済の利用率は上昇しており、特に少額決済時のQRコード利用率がこの半年間で倍増している。
 
表2.2019年度キャッシュレス決済市場動向調査
 

よく利用するモバイル電子マネーは楽天Edy、Suica、iD、nanaco、WAON、QUIC Pay

 スマホアプリの電子マネー利用者(695人)に対して、買い物をする時によく利用する電子マネーのサービス名を聞いたところ、最もよく利用されていたのは楽天Edyで電子マネー利用者のうちの43.7%が利用していると回答した。2番目に多かったのはモバイルSuicaで38.4%、次いでiDが30.9%であった。以下、nanacoモバイルが28.2%、モバイルWAONが18.3%、QUIC Payモバイルが17.8%、au WALLET が15.4%と続く。
 楽天Edy は、今のところApple Pay上で直接利用することが出来ないが、Android端末のおサイフケータイやGoogle Pay上で幅広く利用されている。SuicaはJRの定期券やカード型プリペイド電子マネーとして2001年から利用されており、スマホなどのモバイルアプリ上でも多く利用されている。iD、nanaco、WAONもモバイルアプリ上でよく利用されており、今後もFelica搭載スマホが普及する影響で利用者数を伸ばしそうだ。また電子マネーのシステムとして最も利用率が高いのはおサイフケータイで39%だった。
 
表3.2019年度キャッシュレス決済市場動向調査
 

モバイル電子マネーの満足度はモバイルSuicaがトップ、以下iD・QUIC Payモバイルと続く

 ICT総研が実施したアンケート調査によると、モバイル電子マネーの満足度は、モバイルSuicaが80.7ポイントで1位となった。2位はiDで78.5ポイント、3位はQUIC Payモバイルで75.5ポイントと続く。
 前述の利用率で2位にランクインしたモバイルSuicaだが、6月5日に楽天ペイメントとJR東日本がキャッシュレス決済事業において提携すると発表した。これにより、2020年春以降には楽天ペイアプリ内でSuicaの発行、チャージ、決済が可能になる。またモバイルSuicaは、2020年2月26日以降に年会費を全面的に無料にすることも発表しており、今後さらに利便性が向上することが見込まれる。
 
2019年度モバイル電子マネー満足度
 

最も利用されているQRコード決済はLINE Pay とPayPay、3位に楽天ペイが続く

 よく利用するスマホのQRコード決済サービスに関する質問では、LINE Payの利用率が最も高く40.4%であった。PayPayもほぼ同率で40.3%、楽天ペイが31.7%、d払いが16.1%、メルペイが11.3%、au PAYが8.2%、Origamiが8.1%という結果となった。ゆうちょPay、QUOカードPay、Amazon Payも一定数の利用者を獲得している。
 LINE Payは、「300億円祭」などの大規模なポイント還元キャンペーンを展開したこともあり利用者が急増している。PayPayも昨年12月に実施したキャンペーンに続いて第二弾の100億円キャンペーンをアピールしユーザー数を伸ばした。楽天ペイは楽天カードで支払うユーザーに対して5%還元のキャンペーンを実施しており安定的に顧客を増やしている。7月からは新たに7pay、FamiPayなどコンビニエンスストアブランドのサービスも加わり、今後も激しい競争が続く。
 
表4改.2019年度キャッシュレス決済市場動向調査
 

QRコード決済サービスの満足度はメルペイがトップ、以下LINE Pay・au PAYと続く

 ICT総研が実施したアンケート調査によると、QRコード決済サービスの満足度は、メルペイが75.6ポイントで1位となった。2位はLINE Payで72.9ポイント、3位はau PAYで70.0ポイントと続く。
 メルペイは、国内最大規模のフリマアプリ「メルカリ」の子会社が運営するスマホ決済サービスである。前述の利用率では5位と決して高くはないが、メルカリ上の売買で得た売上金を、コンビニやドラッグストアなどのメルペイ加盟店での支払いや、Suicaのチャージに利用できるのが特徴だ。また、飲食店などで使えるクーポン機能を導入したり、満足度2位にランクインしたLINEと連携し、LINE Payとメルペイの加盟店で両サービスを利用可能にするなど、事業者連携によるサービス強化に励んでいる。
 
2019年度QRコード決済サービス満足度
 

dポイントはドコモユーザーの利用率で1位、楽天は全キャリアで幅広く利用

 電子マネー、QRコード決済とともにポイントサービスの利用者も増加している。ポイントサービスは決済時に0.5~1%程度のポイント還元が行われるもので、年間の還元総額は2兆円規模に達する。
 
表5.2019年度キャッシュレス決済市場動向調査
 
 ICT総研のアンケート結果では、スマホ利用者のうちの7割がポイントアプリを利用していると回答した。NTTドコモユーザーの中で最も利用率が高いポイントサービスはdポイントで41%が利用している。楽天スーパーポイントはauユーザーやMVNOユーザーでの利用率が高く、ソフトバンクユーザーで最も利用率が高いのはTポイント(46%)だった。
 スマホのアプリでは、モバイル決済時にポイントを同時に貯めることができる仕組みも増えている。クレジットカード、電子マネー、ポイントサービスを同一のアプリで利用できればユーザーにとって利便性が高く、顧客の囲い込みにつながることから、ICT総研は「今後はキャッシュレス決済とポイントサービスの統合や連携が進んでいくと思われる」としている。
 また、政府は2025年頃を目途にキャッシュレス決済比率を40%程度に引き上げることを目指しており、モバイル端末による決済の利便性も高まっていることから、ICT総研は「数年後にはキャッシュレス決済額が100兆円を超えることは確実。モバイルキャッシュレス決済市場がこれからさらに急成長することは間違いないだろう」と分析している。
 
 
 

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