富士通研究所、基地局数を3割削減できる技術を開発

2014年11月20日 10時00分更新


 11月11日、富士通研究所はLTE-Advancedに対応した無線基地局の最適な設置位置をシミュレーションによって決定し、配置する設計技術を世界で初めて開発したと発表した。この技術を用いた基地局配置の設計により、必要な基地局数を約3割削減できると同時に、モバイル通信のつながりにくさを解消することが可能になるという。

 近年のモバイル通信ではユーザーの体感通信速度や、つながりやすさを向上することが重要になっているため、ユーザーの通信速度を高速に計算するアルゴリズムの開発が行われてきた。最新の通信規格であるLTE-Advancedで採用された基地局間協調伝送(隣接する複数の基地局が協調して携帯端末へ信号を送信する技術)は、一つの端末がマクロ基地局と小型基地局の両方から同一信号を受信することで、セル間干渉を回避し、通信の高速化を図る仕組みとなっている。
 従来の手法では基地局のユーザーの割り当てを高速演算アルゴリズムにより計算してきたが、この方法は基地局間協調伝送には対応していないため、ユーザーの割当率を正しく計算できず、基地局間協調の機能を持った基地局では、最適な設置位置を判定することが不可能となっていた。

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 そこで今回開発されたのは、基地局間協調伝送を考慮してユーザーの割当率を正しく計算可能な基地局配置の設計技術だ。これにより、基地局間協調伝送を用いる場合のユーザーの割当率を高速に計算することができ、基地局間協調伝送の機能を持った基地局の最適な設置位置を決定することが可能になる。
 この技術を用いることにより、LTE-Advancedに対応した基地局の最適な設置位置の計算が可能になり、基地局増設による大幅な通信品質の向上が見込めるようになるという。また従来と同程度の通信容量を確保するために必要な増設基地局数を約3割削減すると同時に、モバイル通信のつながりにくさを解消される。

緑で表される協調伝送時の各ユーザーの割当率の合計をα、青と赤で表される非協調伝送時の各ユーザーの割当率の合計をそれぞれ1-αとする条件で高速演算アルゴリズムを適用することで、各ユーザーの割当率を正しく計算できる仕組み。そして割当率と受信信号品質から各ユーザーの通信速度を求め、その合計値によって基地局の設置の判定を行う。

緑で表される協調伝送時の各ユーザーの割当率の合計をα、青と赤で表される非協調伝送時の各ユーザーの割当率の合計をそれぞれ1-αとする条件で高速演算アルゴリズムを適用することで、各ユーザーの割当率を正しく計算できる仕組み。そして割当率と受信信号品質から各ユーザーの通信速度を求め、その合計値によって基地局の設置の判定を行う。

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 富士通研究所では2016年頃の実用化を目指すと同時に、今後もLTE-Advancedや次世代の移動通信方式である5Gなどで採用される新しい機能への対応を進めていくという。

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