ドコモ発「もじソナ」誕生!AIで読み書き困難な子の学習を支援
2025年6月4日 09時00分更新
NTTドコモの新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」から、読み書きが困難な子どもたちの学習をテクノロジーで支援する革新的なサービス「もじソナ」を提供するスタートアップ「株式会社Nanka」がスピンアウトし、本格的に事業を開始した。この新会社Nankaは、NTTコミュニケーションズ社員の森分啓太氏が代表取締役社長を務め、ライトアップベンチャーズおよびドコモからの出資を受け、ディスレクシアという特性を持つ子どもたちが直面する学習上の困難に対し、具体的な解決策を提示することを目指している。
ディスレクシアは、全体的な知的な発達に遅れはないものの、文字の読み書きに特異的な困難を抱える学習障がいの一種であり、その特性を持つ人々は世界の人口の約5〜17%にものぼると言われている。この特性により、学習活動において情報へのアクセスや表現に大きな壁が生じ、結果として学業の遅れや、それに伴う自己肯定感の低下、さらには学校生活への不適応といった二次的な問題を引き起こすケースも少なくない。これらの深刻な課題を解決するため、Nankaは「ディスレクシア」の特性を持つ人々がよりスムーズに、そして前向きに学習に取り組めるよう設計された学習支援サービス「もじソナ」を開発したのだ。
「もじソナ」の核心的な機能は、利用者が普段使っている紙のプリントや教科書、あるいはデジタル教材などをタブレットやスマートフォンで撮影したり、データとして取り込んだりするだけで、搭載されたAI(人工知能)がその内容を瞬時に解析し、文章を自然な音声で読み上げ、さらには解答欄を自動で生成する点にある。利用者は、読み上げられた内容に対して、音声入力やキーボード入力といった複数の手段で手軽に回答することが可能だ。この一連の機能により、文字を読むこと、書くことへの負担が大幅に軽減され、子どもたちは学習内容そのものの理解により集中しやすくなる。結果として、学習意欲の低下を防ぎ、学びの習慣化を促進する効果が期待される。また、このサービスは子どもたち本人だけでなく、これまで読み書きのサポートに多くの時間を割いてきた保護者や、多忙な教育現場の教員にとっても、支援の負担を軽減するという大きなメリットを提供する。「もじソナ」は、従来の「読む・書く」を中心とした学習環境に、「聞く・話す」という新しいアクセシブルな選択肢を効果的に加えることで、読み書きが苦手な子どもたちにとって、まるで鉛筆やノートのように身近で不可欠なデジタル学習ツールとなることを目指している。この画期的なサービスは、プラットフォームを選ばないWebアプリケーションとして提供され、学校でも家庭でも一貫したシームレスな学習体験を実現する予定であり、料金体系は月額制を予定している。詳細な利用方法や料金プランについては、今後「もじソナ」の公式サービスサイトで順次案内されることになっている。

株式会社Nankaは、2025年3月10日に兵庫県神戸市中央区に設立された新しい企業であり、資本金は5百万円だ。代表の森分氏は「読み書き困難が社会的困難にならない未来をつくる」という強い信念と情熱を掲げている。そのため、当面は子どもたち向けの学習支援サービス「もじソナ」の商用化(2025年夏頃のサービス提供開始を予定)に全力を注ぎつつ、将来的には「もじソナ」の利用を通じて蓄積された貴重な学習データを分析することによる個別最適化されたアセスメント支援や、さらには社会人のリスキリングやスキルアップを支援する事業など、サービス領域の拡大も積極的に視野に入れている。
このNanka社の挑戦と「もじソナ」の可能性には、教育関係者や投資家から多くの期待が寄せられている。出資者であるライトアップベンチャーズ代表パートナーの中村忠嗣氏は、森分氏の課題に対する深い洞察と「もじソナ」というソリューションへの熱意を高く評価しており、2024年4月から施行された障害者差別解消法の改正(事業者による合理的配慮の提供義務化)も市場の追い風になると指摘、事業化への全面的なサポートを表明している。また、一般社団法人読み書き配慮代表理事の菊田史子氏は、「もじソナ」が読み書き困難な子どもたちが直面する反復練習の壁を取り払い、学力だけでなく知性や教養、そして何よりも自信を育む大きな可能性を秘めていると述べ、このサービスが教育現場における「学びの本質」をより明確にするだろうと強い期待を寄せている。そして、NTTドコモ経営企画部事業開発室長の原尚史氏は、「もじソナ」がこれまで十分な支援や理解が行き届いてこなかったディスレクシアという課題に対し、テクノロジーの力で正面から挑む意義深い取り組みであり、誰もが等しく学ぶ機会を持てる社会の実現に向けたNanka社の役割は非常に大きいと確信しているとコメントした。
NTTドコモグループは、この「docomo STARTUP」という新規事業創出プログラムを通じて、今後も社員の自由な発想から生まれる、社会を変革しうる革新的な新規事業の創出を積極的に支援し、志を同じくするパートナー企業と共に、より良い未来の実現に貢献していく方針だ。「もじソナ」とNanka社の船出は、テクノロジーが教育のアクセシビリティを飛躍的に高め、多様な学び方をエンパワーすることで、一人ひとりの固有の可能性を最大限に引き出す社会の実現に向けた、希望に満ちた大きな一歩となるだろう。
参照URL:https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2025/06/02_00.html