日立、GPU冷却用コールドプレートを開発
2026年10月26日 09時15分更新

株式会社日立製作所は2026年10月21日に、AIデータセンターのGPUを効率的に冷却する新型のコールドプレートを開発したと発表した。生成AIの急速な普及に伴って大規模データセンターにおけるサーバー内のGPU搭載数と総発熱量が飛躍的に増加しており、施設全体の膨大な消費電力と環境負荷をいかに抑えるかが世界的な経営課題として浮上している。通常、AIデータセンターではサーバー内部のGPUで発生した熱をコールドプレート内の冷却液で吸熱し、配管を通じてポンプやチラー、冷却塔などの設備へ循環させて外気へ放出する熱交換プロセスをとる。日立は今回、45度程度の比較的高温な冷却液を活用して外気への放熱効率を高める高温水冷却に着目した。冷却液の温度が高ければ外気温との温度差を利用して自然放熱を促しやすくなる利点がある一方で、GPUの発熱部に到達する前に冷却液が温まってしまうと十分な冷却効果を維持できないというトレードオフが存在する。従来の一般的なプレート構造ではGPUの平面に沿って横方向に液を流すため、流路の後半に進むほど液温が上昇して熱交換効率が落ちる課題を抱えていた。また、伝熱面積を稼ぐために流路を過度に微細化すると液体の流動抵抗が高まり、ポンプを動かすための動力や圧力損失が跳ね上がる弊害も生じる。同社はこうした課題を根本から克服し、高度な冷却能力と流動性の維持を両立させる新たな冷却部材の創出に挑んだ。

このシステムの中核となる技術は、GPUの発熱部に向けて冷却液を送り込み、熱を回収した液をU字型に反転させて排出する独自の「U字トンネル流路」の採用にある。コールドプレートの厚み方向へ向けて冷却液を直接導く設計となっており、入口から流入した冷たい液がGPUの主要な発熱領域の至近距離へと速やかに到達する。熱を吸収して高温になった液はUターンを描いて出口側へと折り返されるが、この構造によって流入時の低温液と回収後の高温液が内部で混ざり合うのを防ぎ、熱回収効率の低下を最小限に抑制できる。プレートの内部には数千本に及ぶ微細な流路が精密に並列配置されており、1本あたりの流路長を短く抑えることで流動時の摩擦抵抗を低減させつつ、全体として冷却液がスムーズに循環できる十分な断面積を確保した。冷却動力は冷却液の流量と圧力損失の積で決まるため、圧力損失を低く保つ工夫が不可欠となる。試作品を用いた実測検証においては、冷却液の流量を毎分4リットルとした条件下で熱抵抗0.011K/W、圧力損失27.6kPaという優れた数値を記録した。これは発熱体表面と冷却液出口の温度差を発熱量で除算して導き出された熱抵抗値であり、従来構造と同じ冷却動力の条件下で比較した場合に、より高い冷却性能を発揮できることが確認された。

さらに同社は、部材単体の測定値にとどまらず、東京をはじめとする代表的な都市の通年外気温度データを用いた冷却設備全体のシミュレーションを実施した。GPUから回収した熱を外気へと逃がす一連のシステムにおいて、冷却液の高温化によってチラーの年間稼働率を抑えられる結果、必要とされる年間冷却電力を30%削減できる見通しを得た。日立は今後、今回開発したコールドプレートを技術的な起点とし、ポンプやチラー、冷却配管などデータセンターを構成する冷却インフラ全体の高性能化と最適化を強力に推し進める計画だ。加えて、同社が展開するデジタルサービス「HMAX Data Center」との連携も推進し、IT機器の負荷状態や冷却設備全体の統合的な自動制御を通じて施設全体のエネルギー効率を極限まで高めていく方針を示している。なお、今回の開発成果の一部は、2026年10月26日から29日にかけて米国カリフォルニア州サンディエゴで開催される米国機械学会主催の国際会議「InterPACK2026」において正式に発表される予定だ。
次世代AIインフラの発熱問題に対して革新的な流路構造で挑み、設備全体の電力削減まで見据えたこの取り組みは、環境負荷を抑えながら持続可能なデータ社会を支えるための重要な技術基盤となる。
参考URL:https://www.hitachi.com/ja-jp/press/articles/2026/10/1021a/





