ソフトバンク、決算で増収増益 来期は1兆円超を予想
2025年5月9日 10時12分更新
ソフトバンクは5月8日、2025年3月期通期決算を発表した。売上高は前年比8%増の6兆5,44円、営業利益は13%増の9,890億円、純利益は8%増の5,261億円。全セグメントで増収増益を記録し、営業利益は中期経営計画の目標を1年前倒しで達成した。中期経営計画の連結営業利益予想を上方修正し、2025年度の営業利益予想は1兆円(+α)に引き上げ、連結純利益予想も5,350億円から5,400億円に上方修正し、過去最高益を目指す。

主力のコンシューマ事業では2024年度のモバイル売上高は1兆5,745億円、営業利益は前期比7%増の5,304億円を記録し、スマートフォン契約数は年間104万件の純増と堅調で3年連続での増収増益達成への期待が持たれる。特筆すべきは、5G対応端末の割合が76%まで上昇し、モバイルネットワーク上のトラフィックが年々約2倍のペースで増加している現状である。このトラフィック増に対し、同社は今後も積極的な基地局増設による通信品質維持の方針だ。一方で、インフレが進む状況下、宮川潤一社長からは「通信料金の据え置きには限界がある」との認識の表明もされた。長年の値下げ競争とコスト削減努力が限界に近づいており、通信業界全体でのデフレ構造からの脱却、すなわちユーザーが納得できる付加価値を伴う形での料金見直しの必要性を示唆された。ただし、具体的な改定時期や方法については慎重な検討姿勢を示した。

エンタープライズ事業では2024年度売上高は前期比11%増の9,224億円、セグメント営業利益は1,703億円(前期比2%増)となった。この結果、エンタープライズ事業単独での売上高1兆円も視野に入り、2025年度(2026年3月期)も2桁成長を目指す。法人顧客向けには、生成AIを活用した業務支援SaaS「X-Boost(クロスブースト)」など、独自開発サービスの展開も加速する。
AI分野への本気度も示された。大阪・堺市での大規模AIデータセンター構築計画は着々と進行しており、自社開発の日本語に特化した国産LLM「Sarashina mini」は、2025年秋の商用化予定している。このAI分野への投資は、現行中期経営計画の目標達成と次期計画期間の成長を見据えた先行投資と位置付けられ、ソフトウェア開発を含めた技術基盤構築のため今後年間1,000億円規模の研究開発費計上の方針も報道されている。

ファイナンス事業ではPayPayを中核とし、そのGMV(流通取引総額)は2024年度に前年比23%増の15.4兆円へ拡大した。PayPay連結のEBITDAは2024年度実績で98億円の黒字を確保し、黒字化が定着している。2025年4月にはPayPay銀行およびPayPay証券をPayPayの子会社とし、グループ内の金融事業再編を完了した。PayPayのIPO(新規株式公開)については、「成長の契機」として上場準備開始の発表している。
決算事業展開と財務戦略について、ソフトバンクが通信事業者の枠を超えAIを核とした次世代テクノロジー企業へと進化を遂げるための具体的なステップの数々、各事業セグメントの成長と、そこから生まれるキャッシュをAIや次世代インフラへ戦略的に再投資するサイクルを通じ、持続的な企業価値向上を目指すようだ。