KDDI、2014年夏モデルスマートフォン・タブレット発表
2014年5月10日 14時47分更新
KDDIは5月8日に「au 2014 Summer」を開催し、スマートフォン・タブレットの新機種・新サービス発表した。各キャリアがiPhoneを発売し、キャリアごとのLTE普及率も差がつかなくなっている中、KDDIは「価格競争」ではなく「価値追求」による戦略を発表した。
まず1つ目の価値としてネットワークの強化を唱える。800MHz帯と2.1GHz帯の2つのLTE周波数帯を整備して全国エリアをカバーし、さらにこの2つの周波数帯を利用することにより「キャリアアグリゲーション(CA)」という技術を提供する。これはLTE-Advancedの技術の1つであり、2つの周波数帯を束ねて通信速度を倍増させる技術だ。KDDIの場合、理論値では下り最大値で150Mbpsの速度が期待できる。CAはNTT docomo、SoftBankともに2014年内の導入を目指しているが具体的な時期を発表しておらず、今回の夏モデルから対応するKDDIが一歩リードした形になる。さらに夏モデルからUQコミュニケーションズのWiMAX 2+にも対応するため、電波状況に応じてLTEとWiMAXのどちらか最適な回線を選択することにより、より安定した高速ネットワークを実現させている(※なお、夏モデルでもTORQUE、ASUS MeMO Pad 8の2機種はCA、WiMAX 2+共に未対応である)。
2つ目の価値として「端末」を掲げ、キーワードとして「大画面と電池」を挙げた。夏モデルでは5機種が5インチ以上の液晶を持ち、さらに3日間以上の実使用時間を実現する大容量バッテリーを搭載する。またQualcommの急速充電技術「Quick Charge 2.0」に対応したACアダプタを使用することにより30分で1日使用できるだけの急速充電も可能となっている。端末ごとにも独自性も出しており、KDDIとLGエレクトロニクスが共同開発した「isai FL」、耐衝撃性能搭載スマートフォンである「TORQUE」、国内初のIntelチップを搭載した8インチタブレットである「ASUS MEMO Pad 8」などは他社との差別化を図ったモデルだ。またメーカーが異なっても同じUIを使用できる「auベーシックホーム」を今夏モデルより提供し、利便性の向上を狙う。
3つ目の価値は「サービス」だ。1000万契約を突破した「auスマートパス」の更なる拡充を目指し、定額制コンテンツとして新たに「アニメパス」「ディズニーパス」を開始する。
「アニメパス」は月額400円 (税抜) で約500作品7,000話のアニメが見放題、最新テレビアニメにも対応し、テレビ放送後にいち早く配信予定。またアニメを探す際、声優や作画監督といった様々な切り口で検索もできる。さらに雑誌「ニュータイプ」と提携し情報コンテンツも配信する他、「auスマートパス」会員特典としてイベントの招待・先行受付等も予定している。2014年6月末より提供予定だ。
「ディズニーパス」はauのスマートフォンをディズニーでフルカスタマイズできるサービスだ。料金は月額372円 (税抜) で利用でき、オリジナルゲームや着せ替えコンテンツ、アラームやカレンダーなどのディズニーコンテンツを楽しめる。また国内携帯キャリア初のサービスとして、ディズニー専門チャンネルがリアルタイムまたは番組エピソード単位で視聴できる動画アプリ「WATCH ディズニー・チャンネル」、「WATCH ディズニージュニア」も利用できる。こちらは2014年7月末より提供予定だ。
4つ目の価値としては「サポート」を掲げ、「auスマートサポート」の2つのサポート拡充を図る。「スマホお試しレンタル」においては対象機器に「au+1collection」の一部ウェアラブル端末が追加する。運動時間の達成度が一目で分かるスポーツバンド「Ssmart Dynamo」、多機能腕時計型デバイス「GALAXY Gear」、手のひらサイズでスマホの写真をその場で印刷できる「Pocket photo」、スマホやタブレット用のタッチペン「スマートタッチペン」の4種類だ。これは5月21日からサービス開始。また6月より新たに「対面サポート」をトライアルで開始する。これまでの電話サポートに加え、対面でのサポートも充実させていく方針だ。
5つ目は「料金」だが、今回は発表されず。すでにNTT docomoが通話の完全定額サービスが可能になる新料金プランを発表しているのでKDDIの動向は気になるところだ。LTE回線を使用した音声会話システムである「VoLTE」の導入をKDDIは2014年内に予定しているので、同様の通話定額サービスは用意していると思われる。
最後の6つ目の価値として、新製品の発表以上に力を込めて発表されたのが5月21日より開始する「au WALLET」だ。「au WALLET」はプリペイド型の電子マネーカードであり、auユーザーならば未成年でも発行できる。チャージ方法はauかんたん決済、クレジットカード、じぶん銀行、auショップから可能だ。コンビニや飲食店などMasterCard加盟店でなら広く何処でも使えるのもポイントであり、基本的に200円で1ポイント付与される仕組みだが、セブン-イレブンやマツモトキヨシ、TOHOシネマズなどの提携店で利用すれば更にポイントは付与される。ポイントはそのまま買い物に使える他、auの決済の割引にも使える。「au WALLET」を起ち上げた背景について、世界的に電子マネーとクレジットカードの決済が増えており、これからさらに成長していく分野であるという分析から通信事業の次の事業として選んだと思われる。「au WALLET」と連動したアプリも5月21日より配信予定であり、残高や利用履歴、auかんたん決済を利用したチャージが可能になる。
以上、auは7つの価値を掲げて新戦略を発表した。冒頭にも述べたがiPhoneが各キャリアより発売され、LTEも全国に普及しつつある今、キャリア毎の差はフラットになってきている。そうした中でauは「価値追求」に差を求めて舵を切った。しかしながら先手を取ったキャリアアグリケーションも年度内にはNTTドコモ、ソフトバンク共に対応してくるだろう。またアニメやディズニーとのサービスの提携は他キャリアでも既に行われている。やはり新たな差として注目を集めるのは「au WALLET」だろう。KDDIが通信事業の他に決済サービスにも参入することの象徴となる本サービスが、我々にどこまで「価値」を提供してくれるのかを注視していきたい。